[コメント] 世界にひとつのプレイブック(2012/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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例えばカウンセリング・シーンで素早くティルトダウンし落ち着かない手の動きを見せるカメラワークなんかはインド系の医師のミタメのカットというよりも、私自身が意識的に視線を送ったと錯覚させられてしまいそうになる。こういった部分と、明らかな演出家の視点−360度パンだとか、無人の屋内を緩やかに前進移動する小津ばりの空ショットだとか−との使い分けが見事なのだ。撮監は高柳雅暢(マサノブ・タカヤナギ)。エンドクレジットで日本人と分かり吃驚して調べた。今後もぜひ活躍してほしい。
さて、どうでもいいようなことですが、二人の恋の始まりを示す「サイン」を画面からトレースしてみたい。出会った瞬間から、というのは科白としてはあるのだが、事実、あの出会いのシーンのティファニー−ジェニファー・ローレンスのカッコよさは忘れがたく印象に残るけれども、どうも「サイン」までは提示されていないと思う。はっきり分るのはダンスの練習を始めるシーン、ボブ・ディランとジョニー・キャッシュが唄う「Girl from the North Country」がかかるシーンで、はっきりとパット−ブラッドリー・クーパーの恋の芽生えが描かれている。鏡に写ったティファニーの裸の後ろ姿を見て動揺するカットだ。このへんはかなりあざとい演出だ。対して、ティファニーがいつから恋に落ちたのかは分かりにくいのだが、ダンスの練習よりも前の、家に誘いに来た男をパットが追い返すくだりで彼女が扉の陰に立っている場面の顏はかなり意味深な曖昧な表情をしている。いずれにしても、二人の恋愛感情の揺れ動きについてはもう少しスマートに描いて欲しいというのが私の感覚だ。また、エンディングでパットがティファニーを追いかける前の、デ・ニーロの見せ場、パットの行動を促す科白は不要だと思った。説明的というか。デ・ニーロが何も云わなくても、ティファニーを追っていく雰囲気がプンプンしていたじゃないか。彼のようなビッグネームをキャスティングしたことでこういうお定まりのシーンを入れないといけなくなったのではないだろうか。
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