[コメント] かぐや姫の物語(2013/日)
かすれ歪み一瞬たりとも定型を構成しない輪郭線は、まさにこの世の無常の具象化。自然の摂理を経てこの世に誕生した生命ではなく、生まれながらにして生をまっとうできない運命の「かぐや姫」もまた無常の象徴。その裏返しとしての現世肯定に涙が止まらなかった。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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手のひらに乗る「小さな命」がみるみるうちに、赤子から幼女へ、そして少女へと、まさにあっという間に「成る」までの「時と命の力」の描写は(あえて書かせてもらえば、子供を育てた経験のある者にとって)歓喜と感傷の涙なくしては見られない。
そして、月の世界イコール死の世界を暗示する月からの使者がすごい。浄土で俗世にあこがれる罪を犯した女は、穢れているはずの地上で罰として「生きる喜び」を知らされ、「穢れてなんかいないわ!」という叫びを残し、再び死へ召される。なんという残酷な物語だろう。
その残酷さの代償としての現世、すなわち「生あるもの」の全面肯定。現実を直視することを訴える高畑勲の肝の据わったニヒリズムに感動した。
はからずもリアルな無常感を作品に植えつけることになった、娘を得た男親の喜びを活き活きと表現する、いまは亡き地井武男にもまた涙する。
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