[コメント] WOOD JOB!(ウッジョブ)〜神去なあなあ日常〜(2014/日)
少年はいかにして物語の本題である林業研修に参加することになったか。その契機として、脚本は「入試の落第」「失恋」「パンフレットの発見」を書き込んでいる。抜け作の演出家であれば一〇分間以上を費やしかねないシーンだが、矢口史靖は巻頭のわずか数カット、驚くべき高速度でこれを処理してみせる。
要するに「話が早い」。このイディオムは少々ダブル・ミーニング的で、つまり「物語の進行速度が速い」の意、さらにそれ以上に「物分かりがよい」の意だ。「カルチュアギャップ・コメディ」であったり「教養小説」であったりという既存の型にアクセスしてそれを観客と共有することで、物語展開の手続きを簡略化している。むろんこれは現代の語り手たちにとって主要な方法でもあるが、さすがに商業映画の演出・脚本をともに手掛けつづけてきた矢口は手練で、そこで生じた余力を自分好みの細部やクライマクスの奇祭を創出するために再分配する(ちなみに余談ではありますが、日本の祭を撮って最良の迫力を持ったシーンは、近年の作では纐纈あや『ある精肉店のはなし』に確認できます)。
さて、神去村に到着してほどなくのシーンで、染谷将太は光石研のトラックに同乗して作業現場に向かう。トラックは水平方向に伸びる前景の道を右から左方向に横移動する。そこで後景に伊藤英明が現れる。猛然と走り出した伊藤はぐんぐん画面手前に迫ってきて、その勢いのままついには走行中のトラックの荷台に飛び乗ってしまう。これがやや長回しのワンカットで撮られている。全篇を通じて最も意欲的なアクション演出を見せたカットがまさにこれで、この水準のカットがもう三つほどあれば私は恵比須顔で親指を突き立て、さらには隣席の観客とハイタッチを交わして喜びを分かち合ったことだろう。
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