[コメント] 恋人たち(2015/日)
全編に亘って水の映画。そして音の映画。 水の扱いでは、トップシーンが浴槽(風呂の場面は3人の主要人物、それぞれの家で描かれる)。船で行く川。自転車が通る水溜り。「美女水」というミネラルウォーター(安藤玉恵の写真が貼ってある!)。2回ある印象的な小水。
そして、真の主人公と云っていいアツシ(篠原篤)の職業が、ハンマーで橋桁を叩き、その音で橋梁点検をする、ということで宣言されている通り、全編、繊細な音に溢れているのです。中でも最も印象的な音の使い方を上げるとすると、光石研と成嶋瞳子がニワトリを見に行くシーンで、瞳子が山の道にしゃがみ、タバコを地面に押しつける「ジュッ」という音に続いて、アツシが弁護士事務所の机に鞄の金具を「カチン」とあてる音。こんな2連打での音の演出、他では見たことがありません。
あと、アツシの部屋で隻腕の先輩・黒田大輔と話しをするシーンで驚愕のズーミングがあります。私は基本的にズーミングは嫌いですが、本作のこのズーミングには心震える。
映画全体を通じて成嶋瞳子が性的(聖的)イコンとして描かれており、エロティックな場面を全て背負っているのだが、そのあまりの屈託のなさに違和感はあるものの、この女優の図太さこそ本作の一番良い部分かも知れない。彼女の自転車は幸福の象徴であり、本作もまた幸福な自転車の映画だ。
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