[コメント] 蜜のあわれ(2016/日)
全編ニヤケながら見た。笑える。特に二階堂ふみの科白がいちいち可笑しい。画面造型もかなり頑張っており、永瀬正敏の露店の回りを何周もする360度移動など目を引くカットも多い。韓英恵の自転車のシーンは小津だ。また高良健吾の芥川が怖くていい。
大杉漣の家の二階を異界として描く演出もかなりいいところまでいっており、大杉が障子を開けると滝のような屋外に繋がる、なんて、あゝ清順だなと思うのだが、鏡が割れて沢山の女の顔が見える画面の反復だけでは驚きに欠け、もっとゾクゾクさせて欲しいと思ってしまう。また、エンディングもそうだし、真木よう子の退場もそうだが、こういう訣別の場面でもっと心を突き動かされるような興奮を味わいたいと思う。ただそれも無いものねだりというものか。あと、最初の二階堂ふみのダンスシーンは「割り過ぎ、寄り過ぎ、大杉のリアクションカット要らない」って思いながら見たが、エンディングのダンスシーンは、それに比べてとても楽しく見ることができた。やはり、こういう場面はフルショットで、できるだけ割らないのがいい。
全体的に清順と較べてしまうと理屈抜きの運動という意味での弱さが露呈するが、清順のパロディを志向している訳でもないだろう。幾分甘いが、オフビートなファンタジーとして、かなり良く出来た映画だと私は思う。
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