ぬるくないのになまあたたかい、きついのにやさしいトラジコメディ。

全編をつらぬくこのあたたかく見守る感の行き場が気になる。

幸せなどどうでもいいと思えるような日常の些細なことの積み重ねが幸せ、なのだろうか？ 希望の飼い慣らしが幸せなのだろうか？ 不条理な人生への適応を成し遂げた人々の、（結果としての）その人にとっての神の目線での幸せな人生を見せられた気がした。

神の目線では人生賛歌と言えるのだろうが、阿部寛や真木よう子、吉澤太陽（子役）のもっと苦しむ姿、そして苦しんだあとになにかが変わる様を見せられないのは、観客である私にとってはある意味地獄だった。かわりに台風だけなのが映画としてはうまいんだけど、この演出のぬるい厳しさは結構きついよ。

是枝監督の、「救いがないのが救い」という映画だったが、橋口亮輔監督の「救いがないのに救われている」映画（例えば『恋人たち』）と立ち位置が似ているようでいて実は好対照というか、考えさせられた。