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[コメント] 南瓜とマヨネーズ(2017/日)

南瓜は素材だけでは食べられたものじゃない。それを美味しく食べるにはそれ相応の手間暇がかかるし、丸々1つを食べ切るにも1人きりでは相当の労力を要してしまう、なかなかやっかいな食べ物だ。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







かたやマヨネーズは野菜や肉類はもちろん、あらゆる食べ物にそれ相応の美味しさを提供してくれる万能選手。主役を張ろうとすればできないこともないのに、そんな面倒なことはご免被るとばかりに脇役に徹するその立ち位置や、仮にそれがなくなったとしても、必要なときにはその辺で調達できるという手軽さもよい。だからなかったらなかったで、無性にそれを欲してしまうときがあるのもマヨネーズというものだ。

本作はいわば、そんな南瓜とマヨネーズの扱いに悩み、自分が愛されるためにはどんなことをも必要悪としてしまう愛されたい女子の日常の断片というべき物語で、こういった非日常的な日常の描かれ方は映画の舞台としては決して悪くないし、主役のツチダを演じた臼田あさ美が、ビッチと罵られてもおかしくないキャラクターをその手前で止める演技に徹していたのにもむしろ好感を持った。

また、売れてもいないのに自らの音楽性を貫こうとし、ヒモ的生活を送りながらもそんな毎日を気にかけ、何かの役に立ちたいと不必要なことをしてしまい、かえって彼女を苛立たせるセイイチ(太賀)の姿はいじらしいし(確かにあの棚は残念な最後だった)、同じようなヒモ男でもそのことに何の罪の意識もないハギオ(オダギリジョー)のさすがの存在感も圧巻(特にツチダの家になだれ込み、朝起こされて寝ぼけたまま天然をかますところは最高!)だった。

個人的にはあんなにゴミ袋の多い部屋で過ごすのは嫌だし、煙草を吸うシーンがやたら多いことに関しては一時代前の画作り感を抱くが、気になっていたセイイチの才能に関して、クライマックスの再会の歌声でそれを回収し、ツチダの涙を引き出す演出も素直によいと思ったし、ハギオとはともかく、セイイチとも最後あっさりと別の道を歩んでいくというラストも、むしろそうであるがゆえに今後の2人に安心感を抱くことができるよい締めであったと思う。

(評価:★4)

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