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[コメント] 女と男の観覧車(2017/米)

ややもするとウディ・アレン最大の傑作。一段と怜悧冷徹に冴え渡った話術の冷血もさることながら、何より、これほど視覚的に充実したアレン映画はかつて見たことがない。ヴィットリオ・ストラーロ久方ぶりの大仕事であり、ストラーロ謹製のアスペクト比一対二画面の作としても最良の成果物に数えられる。
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噺としては『ブルージャスミン』『教授のおかしな妄想殺人』の系列に連なるところの、ほとんど喜劇であることを放棄した残酷譚だが、ジュノー・テンプルが遊園地を訪れる導入部から能動的なカメラワークと力強くテクニカルなモブ捌きが繰り出され、これまでのアレン作品とは一線を画す画面造型の志向が宣言される。何よりワンカット(ワンテイク)内で目まぐるしく操作される照明によってシーンの感情を彫り込んでいく撮影・演出が驚愕と陶然を誘い、芦沢明子永田英則の『岸辺の旅』『さようなら』などを想起させつつも、その遥か上の達成を果たしている。

語りの統御と距離感はやはり大したもので、たとえば、私は子の火遊びが取り返しのつかない大破局を招くのではないかしらと予想し、期待もしたが、これがいかに浅はかな見込みであったかを思い知らされる。物語の決着ぶりは申し分のないものでありながらも、一面では宙ぶらりんのままで放り投げられている。このあたりの「語り切らない/語り尽くさない」ストーリテリングの按配も、多くの脚本家・演出家が嫉妬するに違いないところだ。

美しすぎること、巧すぎることを好意的に見る限りでは、ケイト・ウィンスレットは当然ザ・ベストである。

(評価:★5)

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