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[コメント] The Guilty/ギルティ(2018/デンマーク)

何とか緊張感を維持した88分間、見事。☆4.2点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
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電話が掛かる。皆が一斉に電話に注目する。固唾を飲んでやり取りを見守る。黒澤明の『天国と地獄』('63)は電話という道具を最大限活用したサスペンスだった。今迄は。『天国と地獄』は「最大限」では無かった。『セルラー』('04)進化版。

主人公アスガーを演じたヤコブ=セーダーグレンの端正な面構えが佳い。彼が聴くからこそ、我々も<音>に集中出来る。とは言え、それだけでは無理だ。我々の集中力が途切れる所へ、適度に必要な情報を落としていく脚本こそが見事である。

アスガーは最初は手慣れた緊急通報オペレーター(受ける側)として登場するが、物語の進行と共に彼の刑事魂・人情味・気の短さ等が現れてくる。それは「何とかしたい」という気持ち故であり、私達観客も後押ししているのだ。私は『検察側の罪人』('18)のReviewの中で、「自身が危険に晒される恐れは皆無である…取調室の中で刑事や検察官を引き摺り下ろせる者…はまず…存在しない」と書いた。この映画では、保身に敏感な立場ですらある主人公が、期せずして引き摺り下ろされていく様を、見事に描いている。それは、自ら踏み出した一歩によって始まるのだ。

(評価:★4)

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