コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] レ・ミゼラブル(2019/仏)

イスラム教徒たちが集まるケバブ屋の店名「Ali Bomaye」に感動。たとえるなら日本人が外国で「イノキ ボンバイエ」というラーメン屋を営むようなものだ。
ペンクロフ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







パリ郊外のモンフェルメイユは東京なら足立区あたりか。世界の問題を凝縮したような街の地獄巡り。渦巻く差別と暴力と分断。

登場人物が結構なクズ野郎揃いでしんどかった。とりわけレイシスト巡査のクリス、彼の言うことを聞き彼の行動を見るのはなかなかのキツさだ。この役者アレクシス・マネンティ(データ欄、アレクシになってますよ)が、実は監督の友人で一緒に脚本も書いてると知って感心した。劇中では生まれながらのカス野郎にしか見えない。役者って凄いもんだ。

差別と分断が大きなテーマだった傑作『ブラインドスポッティング』と少し似てると思ったが、しかしまー、二枚ぐらい落ちる。肩入れできないクズ野郎たちを、2時間見続けるのがしんどいからだ。主人公格のステファンでさえ、ガキンチョ撃った同僚を許してSDカードを渡すでしょう。あれはキツい。同情できない。チクれや。

唸った場面はふたつ。パトロール車が遊ぶガキンチョたちの水鉄砲に囲まれて、ビチョ濡れになる場面。死の疑似体験。その後の展開を示唆しており、実に不穏で素晴らしい。ああ、オレは今、いい映画を観てるんだという感慨があった。

もうひとつは、カス野郎クリスが少年イッサを放免する際、「いいな、お前は転んで顔を怪我したんだ。その顔はどうした? 言ってみろ」と嘘を強要する場面だ。ハッキリ言ってこういうクズ警官はどこにでも、我が国にもゴロゴロいるわけだ。思うに少年イッサが「こいつ絶対に殺す」と心に誓ったのは、ゴム弾で撃たれた時でもなく、病院に連れて行かれず放置された時でもなく、この「嘘を強要された」瞬間なのだ。つまり人間の尊厳を踏みにじられた時にこそ男の中にある「殺し」のスイッチが入って、誰にも止められない暴力が爆発するのである。このあたりの描写はたいへん素晴らしいと思いましたよ。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (3 人)シーチキン[*] ペペロンチーノ[*] けにろん[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。