[コメント] JUNK HEAD(2017/日)
クレイ個体の動きだけでは単調になりがちなところ、アングル、高低・奥行き、カットつなぎ、回転・揺さぶりと、あの手この手を連打する画面に対する演出が巧み。よく見ていると同じテクニックの順番や組み合わせを変えて編集の勢いで見せきっているだけのようだが。
それでも飽きさせないのはオタク的学習センスの成せる技、か。物語も独創的というより膨大な過去作を学習した良い意味での既視感あり。グロテスクながらもどこか可愛らしいキャラクターの造形も、そんなマンネリ感を忘れさせて余りある。本作は三部作の第一部ということらしいが、後半になるとアクションがもたついて、物語が次回へと収斂するまえに途切れた「尻切れ感」があり惜しい。クライマックスをもっとシャープに狩り込んで撒いた種の勢いで「続く」だと完璧。
主人公パートンの“何もできなさ”に対して、人間もどきから下等生物まで人工生命体マリガンたちの生命力の旺盛なこと。JUNK HEADとは「頭」だけで生き残ろうとする現代人の脆弱さを揶揄し、たとえ脳みそ空っぽでも生きることに貪欲な「身体」の重要性に着目する生命賛歌なのだろうか。思えばクレイアニメも、椅子に座ったままでは何も生み出すことのできない、ひたすら身体を使ってのクリエイティブ作業だ。
エンドロールで撮影風景が紹介される。撮影スペース(舞台セット)がとても狭いのに驚いたが、効率的に撮影するためには必要最小限な広さの方が合理的なのだろう。ひたすら主人公の冒険が(水平世界ではなく)上下の移動に徹していたのにもうなづける。とりあえず、このセットでの撮影は終わりです、と、第二部以降の舞台の飛躍を予告しているように見えなくもなかった。
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