コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ウエスト・サイド・ストーリー(2021/米)

楽曲の素晴らしさはまったく色あせないが、今風を意識してかダンスの背景をリアルな街頭にしたことで、前作のアート感は失われ「映画的」には『イン・ザ・ハイツ』(2020)や『ヘア・スプレー』(2007)に並んだだけ。無難なミュージカル映画だなと感じてしまいました。
ぽんしゅう

野暮はやめようと思っても、やっぱり1961年版と比べてしまう。

豊かな社会を実現するための再開発によて土地(コミュニティ)が消失する矛盾や、ネイティブなラティーノや黒人の起用による人種への配慮。言語の壁の強調とその克服。トランスジェンダーやマチズモへの目くばせ。そんな視点が取り入れられる。それはそれで評価すべきところなのだが、世紀の傑作(と私は思っている)ロバート・ワイズ版に払うべき敬意として全然「映画的」な興奮度が足りないと思いました。

畏れ多くもあの傑作をリメイクするのなら、あっと驚くようなもっと革新的なアイディアが必要だったのでは。たとえば近未来に舞台を設定して、いまなお存在する移民問題、民族対立、人種差別、領土争い、そして純愛を描く、みたいな(マジで書いてます)。それぐらいすれば映画史に名を残す傑作リメイクになったかも。まあ、野心に燃えた新進気鋭の作家ならともかく、大御所のスピルバーグに(プロデューサーの立場もあるし)そこまでの冒険を望むのは無理でしょうね。

で、本作の最大の成果は、素敵な年のとりかたをしていた61年版、唯一のラティーノ出演者のリタ・モレノが観られたこと。過去から現在の(変わらぬ)状況の橋渡し(目撃者)役としての彼女の存在は重要でした。時代の目撃者の重要性という意味でも「近未来もの」への飛躍も、まんざら無茶ではないと思ってしまうのです。

余談です。トニー(アンセル・エルゴート)とマリア(レイチェル・ゼグラー)の身長差を見ていて『第七天国』(1927)の青年(チャールズ・ファレル)と少女(ジャネット・ゲイナー)カップルを、微笑ましく思い出しました。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (5 人)緑雨[*] けにろん[*] ペペロンチーノ[*] おーい粗茶[*] 袋のうさぎ

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。