[コメント] 柔らかい肌(1964/仏)
次の上映開始時刻まで、ギリギリで間に合うか、間に合わないかというとき、俺は慌てず急がないことにしている。予告編があるかも知れないし、プログラムに遅れが生じているかも知れない、と期待するからだ。この映画はそんな俺に、もう一つ期待すべきものがあることを教えてくれた。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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車に飛行機、昇降機、電話、照明具、スクリーンにカメラ、そして猟銃といった様々なツール、古い用語で言うところの「映画装置」が、全編に渡って実に効果的に配置されている。
まずは主人公が愛人ニコルを同伴して、田舎町ランスに講演旅行に向かう途中、給油のために立ち寄ったガソリンスタンドでの一幕が思い出される。ガスを給油口に挿入するカットで「セックス」を示唆しておいて、直後にニコル=フランソワーズ・ドルレアックのジーパン履いた尻のアップを繋ぐ、その露骨なセンス。(そして女は男の期待通り、スカートに履き替える。)
それに続く田舎町ランスでのシーンは緻密な心理描写によってどれも素晴らしく印象的で、焦燥感と緊張感、そこから解放される安堵感に充ち溢れていた。ニコルが健気で可愛そうで、良く喋る友人の鈍感さに、本当にイライラさせられた。
主人公がストッキングを買うために訪れる下着屋が閉まりかけている、しかし何とか間に合う、という一見何気ないシークェンスも、物語全体、すなわち”飛行機に遅刻したお陰で若く美しい愛人と知り合えた”男が”妻に電話を掛けるのが一足遅かった為に銃殺される”物語の、ターニングポイントとして、これ以上ないというほどの完璧な効果を上げている。
他にもいろいろとあるのだが、それは省略して、とにかく心理描写・物語構造の緻密さに於いて圧倒的な傑作である。
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