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[コメント] ブラス!(1996/英=米)

印象的なところで印象的な音楽は流れるけど、実は音楽映画ではないのでは・・・?
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







音楽にかける団員の熱い思いなんてあんまり伝わってこない。何より最初に生活あり。音楽が好きだってことはもちろん解るけど、明日のわが身もわからない人たちが音楽に向かってるのは、音楽止める=組合に背を向けるってのが何より大きい。それよりヒシヒシと伝わってくるのは、これから先の事に対する無力感。「音楽やってる場合じゃねぇだろ」みたいな。ピエロの彼が新しい楽器を手に入れるのも、決勝の舞台にみんなを向かわせるのも倒れたオヤジの為ってのがかなり大きい。病院のまえでの「ダニー・ボーイ」も音楽第一オヤジへのプレゼントだし。その唯一音楽第一だったオヤジも、最後には人間が大事と悟るし。

でもこれは良い映画だと思う。生活の重みがちゃんと伝わってくる。無力感に支配された空気の中では、ドラマティックな展開も大きな争いもなり振り構わない恋愛も、気力がないんだから生まれるハズもない。それが当然だと思う。あるのはただ同じ世界で同じ空気を吸ってる人たちの連帯感。それでいいんじゃないかと思うし、それがかけがえのないものにも思えてくる。そんな簡単なものじゃないだろ。

夢物語もそりゃ楽しいし見たいけど、食うものあって音楽やってられるんだってのは、やっぱ現実なんだよね。ましてや炭鉱が舞台なんだから。でも最後で音楽を通して、自分達の境遇を世間に刻みつけられてホントに良かったと思う。「威風堂々」は優勝したことへの誇りではなくて、彼らの身の証を立てられたことへの勝利に寄せる歌だと思う。

不備な部分もいくつかあったけど、侘しい中にもささやかな光と温かさが感じられる良い映画でした。

(評価:★4)

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