[コメント] 砂の器(1974/日)
丹波哲郎の涙に胸が熱くなる。70年代の薫る各地の風景にも感動。最近のスタイリッシュな映像に走るサスペンスより、じっくりと捉えた確かな映像がドラマをリアルに描く。3つのシーンの交錯も画期的。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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やはり本作の圧巻は、後半に描かれるコンサート会場で過去を思いながら演奏する英良(加藤剛)と、彼の捜査を進める刑事(丹波哲郎)らの様子と、幼い英良とハンセン病の父との旅の様子の3つのオーバーラップ。これが延々と描かれるのは監督の思いきった判断だったと思うし、見事なバランスで観客を引き付ける。また登場人物たちに余計な設定は与えず的確な演技をさせているのも素晴らしい。ベテランの堅実な刑事(丹波)と若く熱血な刑事(森田)のコンビや、呑気で現代的な令嬢(山口)と薄幸なホステス(島田)の個々の対比も鮮やか。そして無垢であったはずの少年:英良と殺人を犯すまでに至ってしまった英良(加藤剛)の悲しみの変貌。人生をきっちり描いたヒューマンサスペンスになっているのが凄い。観客は清廉潔白な巡査(緒方拳)や調書を読む(丹波)にもらい泣きしてしまうはず。しかし本作は30年前の作品であり、主人公の加藤剛ら親子がハンセン病による偏見により苦しめられたのが製作時のさらに30年前である設定なのに2003年現在でも未だに旅館で宿泊を拒否されたなどというニュースを聞くと根付いた偏見の深さに驚き考えさせられてしまう…。邦画が、まだまだ骨太に作られていた時代の作品。逮捕シーンを描かずに潔く切ったラストも良い。
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