[コメント] 砂の器(1974/日)
当時、世界的流行であったとは云え、本作のズーミングの多用にも、いい加減ウンザリさせられる。ロケ撮影の人物を映した後、ズームアウトして風景全体を見せる、という、逆エスタブリッシング・ショット(こんな言葉はない)が頻繁に表れる。バカみたいだ。ただし、ズームアップは殆どない、というのはまだ救い。
クライマックス、コンサート場面に回想形式で、加藤嘉たちの放浪シーンが挿入されるが、このウエットな演出が日本人好みだというのも分かるのだが、しかし、こゝも、力のない演出が多い。子供達のいじめも、巡査、浜村純の対応も。
美しい日本の自然を写し取ったロケーション撮影は見どころだし、邦画の中でも超有名作なのだから、勿論、興味深く見ることができる部分もあるのだが、全体的な感想として、本作に感動する、魅せられる、ということがあるとすれば、それは、本質的に「映画」以外の事柄に感動している、魅せられている、としか私には思えない。映画を見ているつもりでも、実は「映画」以外を見ている、ということは往々にしてあるものだ。
#本作を見た後、松本清張の原作を、映画との差異を確認したい、という不純な動機で読む。いやあ、映画は随分と枝葉を取ってシンプルな構成にしていることが分かりました。ストーリーとしては原作の方が面白いと思いますが、ただ、新聞連載小説だったことがよく分かる冗長さと、ひっかかりのある文章表現が気になる部分が多く、原作も清張の代表作というレベルの小説ではないように思いました。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。