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[コメント] 祭りの準備(1975/日)

田舎者でも知らない田舎がここにあった。
マッツァ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







以下、殆んどあらすじになってしまったが・・・

いやー、凄い!凄い狂いっぷり!若者の抑圧された性と、押さえ込まれることによって肥大するセックス妄想の日々の描写の痛々しさ。ヒロポンで頭のいかれたタマミ(色情狂)をじいさんに盗られた楯男の狼狽振りと発狂、その後疾走。出産後、頭から毒素が抜けて正気を取り戻す女のメイク・ミラクル!「タマミ!タマミ〜!」と凄まじい剣幕で追いすがる狒々じじい、毛嫌して逃げ惑う正気のタマミに耐えかねず遂に自殺。休む暇なく愛人死亡で父帰る。しかし、母ちゃん父を拒否。昔の愛人に父ちゃん押し付け厄介払い。「何処へもやらんぜよ!楯男ー!」金切り声で縋り付かれ堪らず逃げる息子。近親相姦を目撃、その姿に我が身を重ねて苦悩する楯男。思い焦がれた涼子がいつの間にかビッチ寄りな女に変化し、いざ本番で鳴り出す太鼓の煽情的なリズム。オイオイ!祭りってまさかセックスのことかよ〜!と唖然とするも、既にストーカーと化した涼子が仕事場に乱入、火の不始末で燃え上がる宿直室・・・仕事にも家族にも恋人にも嫌気がさした楯男は遂に・・・以上です。異常です。

書き出したらきりがないほど壮絶すぎる矢継ぎ早な展開が、全く目を離す隙を与えない。楯男の周りを固める脇役達もキャラが濃くて文句なし!特に女優陣が魅力的なのもイイ!ラスト「逃げ場のない男」(原田芳雄)のやけっぱちなバンザイも胸に染みる。

しかし、田舎というのは多分にこの映画(かなり極端だけど)に描かれるような閉鎖的で行き場の無い側面を持っている。ドライな都会に比べて密度の濃い人間関係が耐えられない重さを持っている。自分も早く実家を出たくてウズウズしてた性質なので楯男に激しく共感。『遠雷』が閉鎖的な田舎で生きていくことの決意なら、『祭りの準備』はそんな村社会からの脱出の物語。残るにしても去るにしても、そこには悲壮感が漂っていた。

それで結局「祭り」って何のこと?やっぱセックスですか?んな訳ねーか。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)けにろん[*] 氷野晴郎[*] TOMIMORI[*] ペペロンチーノ[*] くたー[*] ぽんしゅう[*]

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