[コメント] 俺たちに明日はない(1967/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
決して、他の強盗映画にみられるような、何が何でも逃げ切ってやる、とか、何時死んでもいいよう今日を精一杯生きたい、そんな前向きの映画ではないし、明日がなくても明後日があるさ・・・的なのんきな映画でもない。本作ははじめから最期まで切なさで溢れていた。
銀行強盗と殺人。殺人は想定外といえど、今後の彼らの選択肢は、自首、逃げ、継続の3つしかなかった。結局、彼らは強盗を継続する道を選ぶわけですが、この継続の意味するところは、「継続は力也」の継続のような力強いものではなく、「惰性」という言葉こそ相応しい。(銀行強盗という)在り来たりのルーチンもいつかきっと終わってくれる。彼らにとって、「終わるまで強盗を続ける」ことが、一番楽な選択肢だったのだろう。
弟を匿うクライドの兄(ジーン・ハックマン)も、警察に自宅を包囲されるとあっさり弟に加担し、銃を撃つ。この兄の行動は、兄弟愛や日本の仁義に類するものから来たものでなく、単に他に選択肢がなかった、ということだと思う。この兄弟にはリスク回避という観念に根本的に欠けていた。その一見愚かともとれるスタンスは、観るものに切なさを印象付ける。
こんな兄弟と出合ったボニーの描写は一層切ない。印象的なのは、指名手配され全国的に有名となった彼らと、ボニーの一家が野原で対面するシーン。彼女が運命の惰性から逃れる最後のチャンスだったが、彼女は家族との永遠の別れを選ぶ・・・。野原でひっそりとピクニック。彼女の心境を描いた素晴らしい演出だと思う。
彼らの最期。
ボニーとクレイドにとって、2人が一緒に終わることは、パッピーエンドだったといえるのではないでしょうか? 重症の兄を危険を冒してまで車に乗せたのも、兄を生かす為というよりは、兄と同じ場所で・・・、という考えがクレイドの頭にあったように思える。また、それまで耳障りだった兄の妻の悲鳴が、次第に彼らの最期の風景に溶け込んでいくのもいい演出だと思った。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (6 人) | [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。