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[コメント] エクソシスト(1973/米)

1973年。アメリカ人は奇しくももう気づいていたのかもしれない。「非キリスト者」…すなわち「悪魔」が己のホームグラウンドの中心街に入り込み、秩序と国の栄光を破壊することを。「悪魔」は砂漠の国からやって来て、アメリカの金字塔を打ち砕いた。
水那岐

メリン神父が学術調査をしに行っていたのが、まだ敵国ではなかったイラクだというのは非常に示唆的だ。この頃はまだ癒えぬベトナムの傷を抱え、保守の要であるニューヨークにも逆風が人々の頬を叩きつけていたときだ。

アメリカは自由と平和の国土だ、と誰もが信じていた。そこを悪魔が蹂躙するなんて誰も信じちゃいなかった。そこへ悪魔がやって来て、愛すべき少女を蝕むなんて誰が考えたろう?

そうだ。悪魔なんて誰も信じちゃいない。共産主義の亡霊はまだ世界の半分を支配していたが、彼らに敗北した自分達を癒してくれる救世主を嘲う邪教の徒が、本気で国境を越え、自分達の誇るものを破壊しに来るなんて夢にも思わなかった。

メソポタミアの神だったかな、パズズというのは。いわゆる日本にもいる「祟る神」だ。勃起した男根を握り締めている姿だ、というのはこの映画がロードショウされていた頃は子供だったから知らなかったが、そういう特徴は「豊饒の神」にはよくある特徴だ。それを畏れるものは彼を神と呼ぶが、キリスト教徒は別の神々とひっくるめて悪魔と呼ぶ。そして無頼漢の様な性格と醜い容貌を与えられ、蔑まれる。黒人、アメリカ先住民、日本人、共産主義者、総て悪魔だ。堕落した道徳と欲望の権化だ。WASPは先頭に立って彼らを駆逐し、神の名において罰を与え、満足してきた。それが彼らの言う「傲慢の罪」だとは露ほども気づかずに。…そして、アメリカに彼らを守護する神へ唾する「ホンモノの悪魔」は現われて、バベルの塔・ワールドトレードセンターは崩壊せしめられた。

かつて悪魔とそしられた民族・ネグロイドを大統領に戴く現在のアメリカ人たちには、もうその教訓は届いているのだろうか?恐怖映画の殿堂入りしたような、古臭いこの作品から今感じ取れる想いと言えば、傲慢なプライドを誇示している限り、悪魔はいつであれとなりに忍び寄ってくるということだ。そして「悪魔」と呼ばれるのはいつだって人間に過ぎない。

なら、今いちばん恐れられている「ゾンビ」とは何の暗喩なのだろう?興味は少しはある。

(評価:★3)

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