[コメント] 救命士(1999/米)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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マーティン・スコセッシ&ポール・シュレイダーコンビということで、当然『タクシードライバー』と比べてしまいたくなるのが、映画ファン(というか『タクシードライバー』ファン)の性だ。
ゴキブリが耳に入って心停止した女、ズボンに火をつけた男、ガキを孕んでるのに体を売りつづける娼婦、悪魔にとり憑かれていると訴える男、砂漠に置いてけぼりにされたと水を飲みつづける男・・・。『救命士』にはそんな「病んだ人」しか登場しない。誤解を恐れずに言えば、『タクシードライバー』のデ・ニーロのようなイカれた奴らばっかなのだ、この映画の登場人物は。だから、もしこの映画に僕たちが何も感じなくなってしまってるとすれば、それはデ・ニーロのような存在がもう「特異な存在」じゃなく、ごくあたり前の存在、単なる前提になってしまったからのように思う。そう、こんな世の中「シラフじゃやっていられない」。
そんな中でニコラス・ケイジだけが唯一「まとも」だった。彼は言う、「人を救えば自分も救われるんじゃないか」。けれど、何ヶ月も人を救うことができない時間が長くつづき、彼自身も病んでいく、イカれていくのだ。腐った世の中を良くするつもりが、自分自身が腐っていく『救命士』。
もはや「まとも」であることが重要な価値観になり得る、そんな時代に僕たちは生きている―この映画を見ながら、そんなことを考えた。
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