[コメント] スパルタカス(1960/米)
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まあ特別というよりはどこかに普通にいそうな人が、自分を取り巻く見えざるシステム的なものに無自覚のまま飲み込まれていく、といったような物語を好んで描くような作家が、意志をもって体制に真っ向から立ち向かおうとするような、強い魂をもちえた特別な一人の人間を描くことができなかった。この題材はキューブリックの体質的に合わないと思います。「意志を持てていればいいじゃないか。そんな人間は何の問題もない」。従って興味がない、というところだと思います。
スパルタカスを慕って「何かお手伝いを」と集まった人々の中にいた婆さんに「おまえさんにゃあの方(スパルタカス)の偉大さはわからない」みたいなことで食って掛かられ、「俺がそのスパルタカスだ。ローマ兵の死装束をたくさん縫ってくれよ」というシーン。ついで「お前には何ができる?」との問いかけに「私は詩を詠むこと、それに手品を少々」と答えたアントナイナスに、最初は苦笑気味に「ローマ兵でも消してもらうか」と答えるが、やがては彼の詠じる詩が、人々の心をとらえる力強さに驚き、彼の卵から鳥を出す手品でひっかかり黄身を顔にぶっかけて場が笑いに包まれる、というような、強いリーダーがグッと人々の中に入っていって、心を掴んでいく感動的な瞬間を、なんとも冷めた調子で撮っている。
ラスト、磔上の人となったスパルタカスが息子を見せられ「生まれてきたこの子は「自由」なのよ」と言われ、万感の思いで天を見る表情よりも、道路脇にに累々と連なる人柱の図こそこの監督の真骨頂。カーク・ダグラスは出来上がりをどこまで気に入っていたのでしょう?
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