[コメント] あの子を探して(1999/中国)
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テレビ収録中に「どうしてホエクー君を連れ戻したかったの?」とウェイ先生が問われて即答できなかった理由。それは流石に彼女でも”お金の為”とは言い辛かったから。色々な見方が出来るシーンなのですが、僕はこのような受け取り方をました。彼女がホエクー君の事を心配してるだなんてとんでもない。ホエクー君と親密になったというエピソードなんて、それまでにひとつも無いのです。彼女はどこまでも自己中心的なのです。そうじゃないと、この作品の「金と物」が主題として生きてこないのです。その後に涙ながらに訴えたのは、三日間も探している内に、”自分がした苦労”と”探す目的”が同一視されてしまったのです。いわゆる勘違いです。そして思い出すに連れ、感情が高ぶって感極まってしまったからに違いありません。下手に心変わりをする安っぽいヒューマニズム的な描き方よりも、徹底して自分本意のキャラクターの方が僕は好きです。その方が中国山村の貧困者のたくましい姿が明確に表せると思いますから。
この作品でチョークの大切さを教わりました。コーラの価値を教わりました。墨汁の大切さも教わりました。そして中国山村地域は物品が不足している事を知りました。「温かい心よりも、物をくれ!」と言う事が切々と伝わりました。だから最後の街の人々からの寄付はハッピーエンドなのです。物を貰って全てがハッピーエンドなのです。このような中国ならではの貪欲で、したたかなお話もいいじゃないですか。
チャン・イーモウ監督の「あの子を探して」と『初恋のきた道』を比べると、やっぱり後発の「初恋のきた道」が好みかもしれません。特に過去の映像の総天然色が好きです。これは僕がお年寄りから聞いている風景そのものでしたから。例えば戦争中や戦前の映像ですが、この時代は今よりも暗い景色だと勘違いしている方はいませんか?それはその頃の映像をモノトーン写真とかで見る機会が多いので、過去が薄汚れた色だと勘違いしているだけなのです。実は過去は今よりも空気が綺麗で色鮮やかな景色なのです。その証拠に、お年寄りに戦時中の事を聞くと「空は真っ青だった、出兵の港で見た松林の緑が綺麗だった」というような答えが返ってきます。チャン・イーモウ監督は奇抜な映像を創ったわけではなく、お年寄りなら誰でも鮮明に記憶しているものを映像化しただけなのです。美しい思い出と共に・・・。
話が脱線してしまい申し訳ありません。「あの子を探して」を観ていたら「初恋のきた道」の事を思い出してしまったのです。チャン・イーモウ監督はシナリオ面よりも映像や演出が上手い監督だと思います。これからも”映像からほとばしる感情表現”を突き詰めて欲しいと思います。
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