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[コメント] スケアクロウ(1973/米)

ココロの解放。こんなに泣いたバディムービーはちょっと他に思いつかない。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







初めてこの映画を見たとき(20ぐらい)に書いたと思われるメモが本のあいだに挟まっていたのを見つけたので、捨てる前にここに(そのまんま)写しておこうと思います。

いま見返したら違う印象を持つかもしれないけれど、句読点の付け忘れなども何げに気にかかるけど、なんだかとても懐かしくなったので。

もちろん投票の撤回はいっこうにかまいません。てゆーより、完全に個人の記録メモとして使わせてもらい、どうもすみません。

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心が冷たいから山ほど服を着込むのさ、とマックスは言った。そうしないことには寒くて仕方ないんだ、と。

ライオンはいつもおどけて上手く立ち回って、やさしい顔でニコニコ笑っている。そうして子どものようなマックスに静かに相槌をうちながら、「彼には自分がついていなきゃだめなんだ」といった、ほのかな自信もチラチラとかいま見せる。

ライオンは風体も小さくて一見ただのお調子者だけど、実は、なだめ役の、けれど今ひとつ世間知らずの<お兄さん>であるのかもしれない。それともいっそ<妻>と言ってしまおうか。

広大な、けれど何一つ頼るすべのないがらんどうのアメリカの空の下、どうしてこんなに澄み渡るのだろうと思うほど青く美しい空の下、彼らの関係は、もはや夫婦と言っても過言ではないぐらい<密接な>何かで結ばれていたような気がする。

「なぜ俺を相棒に選んだんだ?」と問うライオンに、マックスは答える。「最後のマッチをくれたし、それに、俺を笑わせてくれたから。」

服を異常に着込むのは、マックスなりの自己防衛だったのかもしれない。自分の周囲にめぐらすバリヤーのように、彼は服をたくさん着込むことで、他者との疎遠をはかっていたのかもしれない。

ラスト近く、ライオンがコインを入れたジュークボックスから流れる曲に合わせマックスがおどけながら服を脱いでいった瞬間、彼の心のうちにわだかまっていた人間不信の感情が、徐々にとかれていったような気がした。

バリヤーは解除されたのだ、と。

けれどその一瞬のライオンの淋しそうな顔を、それまでは自分だけがよき理解者で自分だけが支えていたはずのだらしない亭主が突然シャンと立ち上がってそれに戸惑ってしまった古女房のようなライオンのアップを、私はきっと忘れられないだろうと思う。

ライオンの狂気はこの時点からすでに始まっていたのではないだろうか、と考えてしまうのは、私の深読みのしすぎだろうか。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)太陽と戦慄 Santa Monica おーい粗茶[*] あき♪[*] たかやまひろふみ[*] ALPACA[*] uyo[*] 水那岐[*]

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