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[コメント] スケアクロウ(1973/米)

かかし野郎たちは、ほんのちっぽけな望みしか持っていなかった。それさえも叶えられずに呆気なく旅は終わる。それを見つめる瞳は、あくまで冷静だ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ストーリーの構造は『真夜中のカーボーイ』に似ていると言えなくもない。だが、このふたりの望みはずっとちっぽけだ。マックスはピッツバーグに洗車屋を開き、それなりに儲けて毎日ステーキを食べる生活を夢見ている。ライアンは捨てた女との間にできた子供に逢いにゆき、心づくしのプレゼントを届けるつもりでいる。だが彼らは、それくらいを望んだだけで運命に翻弄される。カラスに笑われるかかしは、それゆえにカラスたちから「おまえんとこの畑は荒らさないでやるよ」と見過ごされる…らしい。だがこのかかしたちは、その後の用済みのかかしだ。笑われることだって充分にこの世に貢献しているワケではないのか。彼らの命とは、結局それほどの安っぽいものだったということだ。ライアンはマックスにかかしの人生を教える。それはマックスの乱暴者の人生よりはなんぼかましなモノだった筈だったのに…。結局ライアンが発狂し、ただひとりピッツバーグ行きの旅費を探しつづけるマックスを見つめるカメラは、あくまで冷静である。

「カウボーイにすらなれなかったかかしたちの、使い古されるための旅」。

(評価:★4)

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