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[コメント] キャスト・アウェイ(2000/米)

エルヴィスとゲートと運命の出会い。<やや、妄想系
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







初めのシーン。FedExの人が荷物を受け取りに来たとき、依頼主のベティーナはアトリエでエルヴィスを聞いている。しかもさりげなく画面に映しこまれるそのCDケース(もちろんキングのアップ)により、それがエルヴィスの曲だということが強調される。

ベティーナの家のゲートには「DICK&BETTINA」の文字があり、親切にも字幕でその翻訳「ディック&ベティーナ」が示される。

場面はいきなりロシアに飛ぶ。そしてそこで、ベティーナが荷物を送った相手である在ロシアの夫、ディックが登場する。この荷物を受け渡すシーンで、ディックには愛人がいるということが(なぜかわざわざ)わかりやすく観客に示唆される。

続いてようやくお待ちかねのトム・ハンクス登場。FedExの敏腕社員であり主人公であるチャックは、ロシア内の集積所で忙しく現場をしきっている。そんな彼の前に、事前に用を言いつかっていたらしいニコライ少年がやって来る。用事をまっとうしたということで、チャックは彼に「褒美」を渡す。スニッカーズとCDプレイヤー、そしてエルヴィスのCDだ。「5000万のファンがしびれたエルヴィス・プレスリーだ。」というご丁寧な説明付きで、である。(ちなみに、ケリーとの前半部における最後の逢瀬 - 時計をもらう場面 - で彼らが車で聞いているのもエルヴィス。)

で、問題のラストシーン。チャックがベティーナの家を訪れたとき、再び自宅のゲートが<字幕付きで>映される。約5年前のファーストシーンとは違い、今回は「BETTINA」のみ。「DICK」の文字は取り払われている。愛人の存在も示唆されていたことだし、彼女たちはたぶん離婚したのだろう。もしくは、離婚には至らずともすでにふたりの仲は終わったのだろう。ということが、イヤでもわかるようになっている。

さて、それではなぜ「エルヴィス」というキーワードはあえてわかりやすく提示され、かつ、ベティーナの家のゲートはあえて2回も<字幕説明付きになるほど>大きく映しだされたのか。

「こんなモノを並べられたらたいていの人は同じことを思うのでは?」とここは期待したいところなのだが、私はそれを「これはハッピーエンドへ向かうのですよ。」というスタッフが仕掛けた伏線だと考えたい。チャックが残した感謝のメッセージをきっかけに、共通の趣味をとっかかりに、互いの孤独な状況を追い風に、二人の仲がぐんぐん近付くだろうことを祈りたい。

人が生きていくうえでの孤独について、時間について、運命について、文明について。この映画にはいろいろなとらえ方があるだろう。

が、個人的には「チャック」という(恋人はいるにはいるが)互いに時間に追われてばかりでデートさえままならなかった寂しい男と、ベティーナという(のびのびと自分の自由な時間を満喫しているようでも)愛情には満たされていなかっただろう寂しい女の、ものすごく壮大な出会いの物語、ととらえてみたいような気がしないでもない。

ベティのテーマである翼のモチーフは、チャックを生きながらえさせると同時に、自分のもとへも新しい恋を運んできたのね、と。

(評価:★3)

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