[コメント] 荒野の用心棒(1964/伊=独=スペイン)
1965年、イタリアの大スターソフィア・ローレンはハリウッドを訪れ、欧州一人気のあるハリウッドの大スタークリント・イーストウッドに会いたいと言った。アメリカ人のホストは「何者です?」と彼女に聞き返した。
欧州では爆発的人気を博したこの作品だったが、例の盗作問題の関係でアメリカでは公開されず、その頃の母国においてのクリント・イーストウッドの評価はハリウッドの大スターどころか「落ち目のテレビ・シリーズの男」だったらしい。当時を物語る楽しいエピソードだ。
しかし実際のところこの作品はよく出来ている。ベタベタな下敷きを敷きながらも、大事なところは己のオリジナリティを貫いたセルジオ・レオーネの演出は盗作というひと言で片付けられない、いや、片付けてはならない程の力を感じさせるし、イーストウッドは勿論のこと、何と言ってもジャン・マリア・ボロンテの悪役ぶりが素晴らしい。悪役が良いというのは映画にとって最も大切な要素のうちのひとつだが、その意味でもこの映画は特別な評価に値する作品だ。
そして忘れてはならないエンニオ・モリコーネ。その昔拳銃を持った悪ガキだった者なら必ず吹けるあの口笛。
時が過ぎ、ノスタルジックな思いとともの評価の上積みはあるにせよ、ひとつの歴史を築いた傑作として、オリジナル以上にこの映画を愛してしまうのはやはり邪道だろうか。いや、邪道でもよいのだ。物心ついた頃にはイーストウッドの名を知っていた世代の私には、この映画こそがウエスタンのルーツなのだから。
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