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[コメント] カビリアの夜(1957/伊)

ジュリエッタ・マシーナは本当に素晴らしい女優だ。彼女の表現する哀歓が心に響く。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ジュリエッタ・マシーナが素晴らしい!『』もそうなのだが、大して美人でもないのに画面に釘付けにする力を持っている女優だ。一度見たら忘れられないほどの印象度を残す。女優として魅力いっぱいだ。マンボのリズムで無邪気に踊るシーンはもう楽しくてそれだけで名シーンだし、逆に崖の上で「殺して」と泣き叫ぶシーンの辛さは本当に何とも言えない。フェリーニマシーナのコンビは公私共に切っても切れないです。

 内容は前半は少し粗っぽさを感じた。巧くまとめきれていない雰囲気が画面から感じられた。それに、どのシーンにしても、全てが終盤で重要性を見せてくるだけに、なかなか映画の一貫性を見つけられなかった。少し退屈かもしれない、とも感じさせられた前半があったからこそ映画の良さが出ている。男に捨てられ川で溺れたカビリアが、豪邸に住む映画スターから、それとは正反対の洞窟で暮らす貧しい人々とのふれあい、マリア様のエピソード、そして舞台の催眠術から出会ったオスカーとの交流。映画の中で様々な経験をすることでラストシーンが生きてくるのだ。

 ラスト、色々あったけど、やっとカビリアは幸せをつかむの方向へ進むと見せつつ、微妙に嫌な臭いが漂う。素直にハッピーエンドで終わりそうにも見えるが、その嫌な臭いを漂わせるところにフェリーニの巧さを感じる。案の定、カビリアは信頼したオスカーにも捨てられることになる。その瞬間、皮肉にも川に落とされて捨てられる冒頭のシーンが思い起こされる。崖の上で泣き叫ぶカビリアの心境はとにかく複雑だ(この崖のシーンはモノクロながら非常に美しい)。遂に幸せになれると信じ、一時は何もしてくれないと疑ったマリア様も再度信じたのに、またも幸せを掴めず一人で泣き叫ぶ。なんという悲劇だろう。その直後のラストーシーン、嬉しそうにはしゃぐ人々の中で歩くカビリアの姿はその対比から異様に悲しい。それを見て涙を浮かべつつ笑うカビリア(このシーンでのマシーナの表情は絶品)。本当に複雑だ。彼女にはいつか幸せを掴んで欲しい。幸せなんて誰でもそう簡単には掴めないものなのかもしれない。辛くても、それをわかって前向きに生きていくしかないのだろう。

(評価:★5)

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