[コメント] 去年マリエンバートで(1961/仏=伊)
対立する要素が周到に張りめぐらされる精巧な迷路。「答え」がないと聞いた瞬間、果てしないめまいに襲われる。
白と黒、過去と現在、記憶と忘却、嘘と真実、生物と静物もしくは生と死(彫像のような人物、植木、壁の草模様等)、縁取るものと縁取られるもの、鏡の中で反転する左右、音と沈黙(絨毯に吸いこまれる足音等)、ゲームにおける先手後手と偶数奇数の関係、劇中の人物と観客、屋内と庭園、・・・・。他にもいろいろ見つけることは可能なように思えるが、これらの対立する様々な要素が、一方に取り込まれたり反転したりするうちに実に精巧な模様が描かれていく。言ってみれば精巧な彫刻のなされた器みたいなもの、さぞかし恐るべきものが中に入ってるのだろうとフタを開けた瞬間、空っぽなことに気付く。ここが一番の驚きどころ、っていうかもう腰砕けモノ。でもちょっと待てよ・・・もしかしたら「何もない」という事自体も答えになりうるのでは・・・?と、考えた瞬間すでに頭のなかでは思考の反転が始まっている。
幾何学模様自体は模様としてだけ存在して、そこに何が描かれてるかは観客の主観によって決まる。一見真似の出来そうな芸当に思えても、実際コレを越える精巧さは至難の技。もし似たような映画が出てきたとしても、おそらくこれ以上のものは出来ないのではと思い、今回5点に昇格!・・・とはいえ、セイリグの全く型崩れしない恐るべき髪型にプラス1ってのもある。
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