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[コメント] クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲(2001/日)

未来へ希望を持つこと、諦めず生きること、家族を大切にすること・・・このおバカアニメから発せられたメッセージは多くの人の心を揺さぶるだろう。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 「映画秘宝」年間NO,1など、異様に高い評価を得る理由が映画を見てはっきりした。多くの方が書かれているが、この映画は同年の大ヒット作『千と千尋の神隠し』を超えるレベルに達している。涙なしには語れない傑作アニメーションだ。

 この映画では誰もが感じるささやかな気持ちをたくみに掬い取っている。もし子供の頃に戻れたら・・・という想像はどんな大人でもふとすることがあると思う。昔のアルバムをふと眺めてみたりと、哀愁に浸ったりするものだ。人間は誰しも過去という存在に縛られている部分があるのかもしれない。そんな点から考えて、20世紀博という発想は面白みがある。大人の中にも存在する純粋な感情を垣間見た気がした。

 だが、哀愁に浸るのは時には良いが、この映画のように行き過ぎた形になると・・・。誰も先行き不安な未来を考えず、安心して過ごせた過去のみにすがり続けたら・・・。あくまで「もしも」の話ではあるが、誰もが持ち得る感情を扱っているため、全くの御伽話として片付けるわけにはいかなかった。

 ちなみに、映画とは言っても毎週放送されるアニメ番組の映画化作品である。故にストーリーは決して新鮮味のあるものではない。子どもがたくさん見ることを考えると、彼が楽しめないのでは意味が無いし、伝わらなければ意味が無い。当然、普段のクレヨンしんちゃんのユーモアも必要不可欠な要素である。自分はたまにテレビでクレヨンしんちゃんを見ると爆笑するタイプなので、普段通り楽しんで見られた。長さも適度であるし、子どもも同様に楽しんで見られる映画であることは間違いない。

 だが、この映画は子どもが楽しいの域以上の深みがある。ディズニー&ピクサーの『トイ・ストーリー2』や『モンスターズ・インク』といったアニメと同様にその深み故に大人が大感動してしまうのだ。哀愁の気持ちを感じさせ、希望を持つこと、生きること、そして家族の存在の大きさなど普遍的なメッセージが数多く含まれ、どれも心に染みる。自分はこの映画で2度涙を流した。まず、匂いの存在(この設定は安易な気もするが・・・)に気づいて、ヒロシが夢の中で今までの人生を回想するシーン。自分の過去の楽しみおりも、今大切な家族の存在の大きさを感じさせる。そして、懸命に塔を登るしんのすけ(ここでの走る映像はなかなか)が最上部に到着し、なぜそこまでするのかを尋ねられ、「家族と一緒にいたい。」という台詞を言うシーン。普段のアニメではユーモア交じりに連帯感の無いような家族像を見せているが、それでも家族は大事だということを5歳の園児が泣きながら言うと非常に響く。この野原一家の姿を見て感動した人々が、過去への哀愁より未来を求める姿も勇ましい。現在先行きが不安な時代かもしれないが、そういう時だからこそ希望を持って前進する姿勢が大事なのかもしれない。最後、自殺を試みようとするイエスタデイワンスモアの二人だが、鳩の家族妨げられ飛び降りず、「死にたくない」と涙を流す。ここからも生きる希望を感じさせられた。そして、家に戻った野原一家の姿を外から見ると非常に微笑ましい。

 『サウスパーク』の映画版を見たときも感じたのだが、おバカアニメだからと言ってバカに出来るものではない。中にはものすごい力を秘めているのだ。

(評価:★5)

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