[コメント] ウォーターボーイズ(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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感動ではなく悪寒です、念のため。『ベニスに死す』にケンカを売るパロディというよりは、どちらかと言えば某人材派遣会社のCMにチャイコフスキーの弦楽セレナードを被せるセンスに近いような。この監督のセンスって、映画よりもCM制作に向いてるような気がするなぁ。
とりあえずベタな笑いについては、好みの問題なので置いといて(と言って逃げる)。この映画は青春ドラマでもなく、シンクロというスポーツを紹介する映画でもなく。要は男子の肉体の見事なバネとしなりを見せたいがための映画だと思う。
魚たちには可哀想だけど、なんでプールの水を抜いたのかと言えば、ドラマの成り行きというよりも、そうでもしなきゃ魚たちがピチピチ跳ねる姿が写せないから、としか思えない。そんな活きの良い魚やイルカショーが、しぶきを上げて弾ける男子の肉体のバネとシンクロする図。ああ、これがやりたかったのかぁ、と。そして高飛び棒が描く曲線にシンクロするのは、柔軟な体のしなり。
でも個人的に本当に見たかったのは、感情の弾けっぷり。男子たちの悩みの多さや鬱屈振り、「目立ってやりたい」「打ち込むものが欲しい」という気持ちがどれだけ切実なものか。そんな感情が捌け口を求めて、はじめて桧舞台で存分に弾けるというドラマになるのが普通だと思うのだが、そんな効果をあえて考えてないのか知らんが、唖然とするほど安直な展開の中にはそんな彼らの感情のボルテージを見ることなど出来ない。だからせっかくの頑張ったラストの見せ場なのに、それ以前のドラマ展開でこちら側のバネが十分引かれていないので、一緒になって弾けることが出来ない。水面をキラキラさせたってダメ、シーンを本当に輝かせるのはそんなことじゃない、と言いたくてウズウズしてしまう。
ドラマなんかいいから、ただ若さゆえのパワー(とベタネタ)を見せたいってのなら、もっと日常的な題材にして欲しい。これじゃ「男子のシンクロ」がまるで観客を釣るエサと思われても仕方がない。特異な題材を選ぶなら、それなりのドラマを期待するのって自然じゃないだろか?
(2002/10/6)
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