[コメント] メメント(2000/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
………見終わった後、一つだけ心に決めた。絶対に「で、真相はどうだったの?」 と思うのはやめよう。記憶と記録に関する錯綜、短期間で記憶を忘れる男の特性を利用、悪用する人たち、そのイメージさえ残れば、もう十分だと思った。
デジャヴなどにおそわれるとき、自分のやったことに関して自信がもてなくな ることが私はよくある。そのときは自分が循環して同じことをやり続けている のではないかという恐怖感にさいなまれる。それと似た感じを、主人公及び、 似たような不快感を独自の時制の進み方で体験させられる観客は味わうことになる。それは宇宙の果てのむこうには何があるのか、(『2001年宇宙の旅』の最後 の映像などはまさにそれの視覚化だと思うが)ということを考えたときに途方に くれてしまう気持ちと双璧をなす、永遠や永遠の循環を前にしたときの絶望的な 体験である。この作品は、繰り返し見るものというよりは、1回目に見たときの経 験が圧倒的だと思う。決してそれが『アメリ』のように、心地よい方向に向かうことはないが。
なんてことを書きながら、書き始めたときの気持ちを忘れつつある俗物で煩悩の深い私は、やはり真相が 気になって、いろいろ情報を仕入れ、おおかたの謎を解きほぐした。(悲しいことに、私は自力でわかるほどの眼力はまったく持ちあわせていない)ふうん、よくできた脚本なんだなあ。『ブレアウィッチ』に比べれば相当上等である。ただそれ以上でもそれ以下でもない。
最初の感想の時点では、初の採点不能にしようかと思ったが、この作品を2回見るという行為は、ただ単に残りの謎を解きにいく経験にしかすぎず、それは私にとっては映画を見に行く行為ではなく、パズルを解きに行く(それも十二分に映画を見に行く行為を意味するのかもしれないが…)ようなものにすぎない。結局2度みたいとあまり思わないので3点満点になり、構成と発想の妙は満点をあげてもよいと思うので3点。
(追記、以下さらにネタバレ)
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冒頭で述べた記憶と記録の交錯というのは、記録ですら個人が取捨選択していた恣意的なものにすぎなかった、という結末においてより際立つ。このような視点は、キューブリク的な、人間を上から見下ろす視点との類似を感じ、いまいち自分に合わないと思うに至った。
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