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[コメント] ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ(2001/米)

ロックに乗せた前半の語り口がかなり気に入った。だが、終盤にかけて映画自体が勢いを失ったのが不満だ。劇中のロック音楽はさすがです。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 Tear Me Downというかなりノリの良い曲から始まり、熱い魂を感じそうな予兆を感じた。前半の語り口が非常に好きだ。自身のロック音楽に乗せて、主人公ヘドウィグの波乱万丈の半生を語っていく。激動の時代の東ドイツに生まれた子供時代から、ロックンロールとの触れ合い、アメリカに渡って来た理由、怒りの1インチについて、とどれもそれぞれユーモアとその時代背景も交えつつ、面白みのあるエピソードが語られていた。ベア・グミを貰うエピソードがかなり好きでした。

 それと同時進行で、曲を盗まれてロックスターにのし上がったヘドウィグの元恋人トミーを追いかける全国ツアーも進行。次第に彼との触れ合いも語られていき、話の中心もその方向へ。終盤になると、それに関した愛の物語の色が強いのだが、二人についての描写の希薄さが多少気になるため、前半に比べてあまり気分が乗ってこなかった。泣かせドラマの方向へ走ったようにも見えたのが残念な点だ。ラストこそ音楽でうまく盛り上げてはいるが・・・。前半のテンションが良かっただけに、もう少し映画自体のパワーを感じさせて欲しかった。最近見てすごく感銘を受けた『あの頃、ペニー・レインと』も同じロックを扱った映画だが、比較するのもなんだが、ドラマの点でこちらは劣っていたと思う。

 監督・脚本・主演をこなした、ジョン・キャメロン・ミッチェルだが、この映画の中での彼の存在感は強烈だ。完全にヘドウィグになりきっていた。ロングランされたミュージカルで長く演じてきた経験が、この映画版でも発揮されていたと思う。さらに、彼らの歌うロックンロールは非常に良い。映画のテーマ的曲である、The Origin Of Loveは何度も映画内で使われるが、素直に良い曲だと感じた。人間はもともと背中合わせで二人がくっついていて、誰もがその片割れを探しているという歌詞のアイデアが気に入った。実際、後半の物語よりも、この歌詞の方が印象深かったりもする。

 悪くはない映画だが、もう一押し欲しかっただけに心残りがあったのが残念。でも、音楽が非常に印象強いので、サントラが欲しくなる映画です。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)ぐるぐる[*] ぱーこ[*] kaki[*] カフカのすあま[*] けにろん[*] muffler&silencer[消音装置][*]

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