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[コメント] 害虫(2002/日)

なっちゃん、頑張れ。オレは君の味方だ。努力が実らなくてもアンラッキーなことばかりでも、いつかきっと晴れる日が来るさ。と思っていたら…うおおおおお〜!? [ユーロスペース2]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この作品の登場人物は、皆揃いも揃って一般的な社会通念や常識から外れて生きる人物ばかりだ。

主人公のサチ子からして不登校生徒だし、母親は自殺未遂を起こしている。サチ子が親しくする少年は当たり屋で稼いでいる上(当たられる男も運転中に携帯使ってるし)、その少年の友人はホームレス。そんなサチ子にクラスメイトは冷笑を浴びせるのみで、付き合う相手の男子生徒も隠れてタバコを吸っているようなヤツ、といった具合。

とにかく(いわゆる)普通の人間が、ほとんどと言っていいほど出てこない。その中で唯一の例外が、サチ子の親友である“なっちゃん”こと山岡夏子(蒼井優)である。不登校を続けるサチ子に学校に戻るよう誘い続け、内心好きだった(らしい)男子生徒が親友のサチ子と付き合うことになっても、何も言わずに「応援しているから」という健気さ、おぢさんはグッときたよ。うん。

ところがそんな彼女も、事もあろうにサチ子の手によって無残な運命を辿るという恐ろしいまでの筋書き。

はっきり言って、こういう作品は自分の趣味ではない。映画としての完成度がどうという問題ではなく、「もともと普通じゃない人間」の話を映画にする理由が理解できないのだ。「普通の人間」が何らかの理由で普通ではなくなっていく過程(あるいは再び普通に戻っていくまでの過程)こそが映画にする価値があると思っている(個人的な嗜好/志向だけど)自分にとっては、どうにも受け入れがたい内容だ。

話の内容ばかりについて並べ立てたが、映画そのものの出来としてもどうも今一つの感がある。シーケンスを変なところでぶつ切りにしてしまうかと思えば、同じようなシーンを続けている個所もあるし、脚本がそうなっているのか編集でこうなったのか、ともかくもその意図が分からない。

編集といえば、サチ子が母親の愛人(?)に乱暴されかけ、帰ってきた母親に「サチ子が可哀想すぎます!」と夏子が言う場面がある。ここはさすがに蒼井優も苦労していたようだが、そのすぐ後が母親が慟哭するというショットなのだ。りょうのあの鬼気迫る演技を見れば、経験の浅い(と思う)蒼井優が霞んでしまう、と言うより下手に見えてしまうのは当然だ。あれでは蒼井優が気の毒。これこそ編集でどうにかならなかったのか。

★2にしようかと思ったが、「教師との恋愛」という過去の呪縛を捨てて、自分自身で生きていくということをつかみ取ったラストのサチ子の姿で、やっぱり★3にしておく。

…でも、これも考えてみたらずいぶん残酷な話だよなあ。サチ子のその後を想像しても、家出少女が働く口なんて風俗関係以外にあり得ないと思い至れば、結末は目に見えているわけだし。

(評価:★3)

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