[コメント] コラテラル・ダメージ(2002/米)
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その後メキメキと演技力をつけたスタローンと違い、この男のマチョズモは一辺倒なので、泣かせるための設定がシュワのシュワによるシュワのための設定にしか見えない。その後の展開も筋も穴だらけで、前半は睡魔と闘い続けた。何とかサンゴヘビに起こしてもらったのはいいが、酷い話がさらに酷くなる後半、今度は逆にだんだんB級を見ているかのような笑いが込み上げてきた。
復讐のために現地入りしたシュワが敵のアジトを吹き飛ばすのだが、これぞ正真正銘の報復テロ。直後、シュワは自分のしたことを報復テロだと自覚するんだが、中途半端なアマチュア・テロリズムは自己の破滅を招くのみ、とっつかまって利用される始末。そしておめおめ帰国したのはいいが、観客の誰もが気付いていることにやっと気づいた頃には時すでに遅く、第二、第三のテロ。そのテロリストをぶっ殺すために、ガス管を斧で爆破。テロをやっつけるために、今度は自爆テロ。しかも自分の国で…
まるでテロのオリンピック、ハリウッド主催、ルールブックはハムラビ法典か?
…という内容になってしまっているが、最後の最後で悔い改めたテロリストの断末魔を見取ったシュワが、彼らの子供を連れて去り、大統領からの自由勲章に沈黙する最後が何となく心に残った。
そういった時折垣間見せるテロリストを育む土壌への言及が“なんちゃって”の域を出ているとはおよそ言いがたいのだが、合衆国万歳な映画を撮っていれば安泰なこの人が、わざわざこんな“なんちゃって”をやる必要はないというのもまた事実。何かしら意図するところがあったのだろう。
惜しむらくは、9/11。間違い無く、改ざんを余儀なくされたのだろう。消防士という設定が、何より不幸中の不幸。おまけにテロ擁護と受け止められかねない中途半端な内容。結果シュワは“消防士が英雄となることを先取りした”なんて顰蹙すれすれの頓珍漢な弁解をする始末。
もしもテロリズムを育む土壌への考察をもう少しちゃんと深めた内容で、なおかつ現実に屈しないで公開に踏み切っていたら、合衆国ではともかく、世界は喝采を送ったんじゃないだろうか。少なくとも俺は、今までのシュワに対する“強いアメリカの独善の象徴”という見方は撤回したと思う。
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