多くの方が既にコメントされているように、この作品の唯一の欠点は「史実」がベースになっており、それを書いた本人は生きており、その本人が主役のドラマであるところだと思う。

それを差っ引いて観たら、かなり上質の人間ドラマだと思うのだが。

役者は脇に至ってまでキャスティングにこだわっているし（息子を使ったっていいじゃん。あれくらい）、カメラ割りも編集も派手さには欠けるが冗長でもない。私にとってはとても心地の良いテンポだった。

コミカルなシーンも予想外に多くて楽しかった。

それもこれも私自身、テレビでは見ていたがアノ事件については思い入れも何もなかったからだと思う。所詮、テレビで報道しているものなんて一部の事実だけだし、体験談を書いた原作者や、他のアノ事件に関する書物を書いた人たちだって、それぞれの思惑があるだろうさ。真実なんてものはいつの世も闇の中。史実なんてのはこの際どうだって良いのだ。

だから単純に現代の名優たちのやりとりを見ているだけで楽しかった。

ただ、それでも佐々さん本人は出るわ、その人を演じた役所さんはかっこいいわで、ちょいと鼻にはついたけどね。でも、書いて本にして映画化した人の勝ちだな、これは。ドキュメンタリーが見たかったらNHKを見なさい。