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[コメント] ファム・ファタール(2002/仏)

デ・パルマは悪い子、本当に悪い子。心の腐った…」
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







これは劇中の台詞からの引用なのだが、彼は本当に悪いやつだ。キャリーをはじめとする自作で散々使ってきたトリックをここでも本当にあきれるほど大胆に使うのだから。これには「映画をバカにしてる!」と怒る人が出てきても仕方ないだろうなとさえ思ってしまう。

しかし彼はそんなことなどどこ吹く風だ。それどころか最新のインタビューで彼は「私はアイデアの宝庫だ」とさえ言い放っている。もちろんそのアイデアのほとんどが寝ていて夢から覚めたときに思いついたものだろうが…。

しかし考えてみると、この映画での冒頭の『深夜の告白』(これは「そういう映画を見ると、夢に影響を及ぼす」という伏線とのこと)や、3時33分から動かない時計のように、トリックを解くキーをあちこちにちりばめながら、再見するといかにも夢であるかのごとく微妙に辻褄があわないように作り込んでいくという作業は意外に手のかかるもので、それこそたくさんのアイデアを必要とするものだ。それもごく普通のアイデアではやはり面白味に欠けてしまう。そこにはやはり彼しか出せない確信犯的な大胆さがないと、「デ・パルマの映画」としての満足度が欠けてしまう。

そのような現在の彼をとりまく状況を考えると、このコテコテのデ・パルマ風味漂う今作は、「本当によくやった!」と賞賛してもいいのではないかと思う。たしかに一般の映画レベルで考えると、この映画は突出したものではないのだろう。しかし彼しか撮れない「デ・パルマの映画」としての今作は、非常に大きな満足度を私に与えてくれるのである。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (9 人)袋のうさぎ ミルテ[*] わっこ[*] あき♪[*] ボイス母[*] ペペロンチーノ[*] セント[*] 緑雨[*] ダリア[*]

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