[コメント] 告発(1994/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
個人的な話だが、私には、ヘンリーとさほど変わらぬ軽罪でありながらも悪運が重なり、「国家経営による檻」に監禁されてしまった友がいた。何度か場所は移ったが、そのたびにその人を訪ねていた。だんだんやせ細り自信をなくし卑屈になっていくその人を見ているのは、そして、面会のために、ずいぶん横柄な態度で接見者を威圧する職員に許可をもらわねばならないのは、本当にいやだった。
どんな目にあっているのかを接見中に直接聞いたことはなかった(というか、真後ろに職員がいるので不可能)が、そこに不当に長く閉じこめらているあいだ、その人の中にあった大切な何かが少しずつ失われていっているのはわかった。ガチャガチャと鍵をかける職員のことを「先生」と呼び、また、職員たちもそれを当然のように受け入れていることに驚愕した。「どうしちゃったの?あの人たちにいったい何を教わったというの?」もちろん、そんなことは聞けなかった。
後になって、職員をそう呼ぶことがそこでの慣例になっていることや中では当然のようにひどい行為が繰り返されていたこと、そこで受けたレイプや暴力を告発し今でも裁判を続けている人が少なからずいることを知った。
けれども、だからと言って私には、その大きな権力のようなものを告発する行為に加わろうというような勇気はない。今ではもう自由の身となった友人も、当時のことは全て忘れたい、と言っている。世の中なんてそんなものだ。圧倒的な権力には見ざる聞かざる言わざるを通して時の解決を待っている方が、傷つかずにすむのだから。どう考えても私は「お兄ちゃん」だし、どう考えてもそれが多数派。
だからこそ、私はこのことを友情の映画として撮りあげ風化させないようにしてくれたスタッフにも、そこに素晴らしい演技だけではなくネームバリューという貴重な財産をも投じてくれた演技者にも、深く敬意を表したい。と思う。
友情というテーマも役者のネームバリューもなかったら、こんな地味な映画、拡大公開されないでしょ。実際の話。
もちろん、モデルとなったふたりにもね。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (9 人) | [*] [*] [*] [*] [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。