[コメント] ラスト サムライ(2003/米=ニュージーランド=日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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直感的にだが、勝元はなにかを守ろうとして死んだのだと思う。「武士道とは死ぬことと見つけたり」と言う人もいるくらいだから、彼が守ろうとしたのは武士道だったという見方は成立すると思う。そうであれば、彼はその死によって武士道を守り通したことになるので、「彼の死とともに侍(精神)は失われた=勝元こそラスト・サムライだった」とするこの映画の結論は、論理的に破綻していることになる。論理的に破綻した映画なんていくらでもあるから、この映画も単にそうなのかもしれない。
そうではない、つまり論理的に整合すると考えるなら、以下の如き可能性がある。まず彼にとっては戦う行為そのものが目的であって、勝ち負けは問題とならなかった、というもの。この場合は武士道というものを、勝ち負けを度外視して戦う行為、としていることになる。こんな価値観は失われてもまったく問題なさそうに思うが、この約60年後の国際紛争で日本が行なった行為を思えば、「失われた」とするのは事実として間違いである可能性が高い。
もう一つの可能性は、勝元は何かの目的の為に戦いを始めたのだが、その目的を達成できずに敗れた、というもの。この場合も、その目的が何であったにせよ、敗れた原因は刀だけの軍隊で鉄砲軍隊に挑むという根本的な無謀さ(これをすなわち”無鉄砲”という)にあるので、そもそも本気で目的を達成する気があったのか疑問が残る。映画において、疑問を残したままにしておくのは独善である。
したがって、この映画は、A:論理的破綻、B:事実誤認、C:独善的、のいずれかであることになる。個人的には冒頭に書いたように、この映画の魅力(があるとしたら)は、論理破綻の魅力であると思う。つまり
結論:「(少なくともこの映画の)武士道とは、論理的破綻と見つけたり」おそまつ。
70/100(03/12/10レビュー追記)
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