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[コメント] 春の日は過ぎゆく(2001/韓国=日=香港)

愛はなぜ変わるのだろう。かけがえのない人、そう思っていたはずのに。 いつまでも1人の人を、何故愛することができないのだろう。
琥珀

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







透明な心を持ち優しすぎるほど優しい男と、活発で明るいがために逆に本心を うまく言葉に出せず一人想い惑う女。この監督の「八月のクリスマス」と、男女 の設定はよく似ている。川のせせらぎのような音楽や、その挿入回数、使わ れるシーンの選び方は前作と同じようにうまい。唸るほどうまい。 心に沁み渡り、観終えた後いつまでも広がってくる。

「八月〜」では、恋模様と平行して父親と息子のストーリーがあった。今作でも 同じように、「家族」の物語、祖母と息子の話がある。死んだ祖父を忘れられ ず、駅への徘徊を続ける祖母。若い時の祖父の写真は分かっても、死ぬ間際 に撮った写真だと誰だか分からなかったりする。そんな痴呆のある祖母が、落 ち込むサンウの姿に、春の陽射しが差し込む縁側でポツリと呟く。

 「バスと女は、去ったら追うものじゃないよ」

日々の生活が記憶の彼方に消え去ろうとしている女は、孫の恋の行方を知っ ていた。しがみつき泣きじゃくるサンウ。泣けた。

理由を言わぬまま別れを告げるウンスに、サンウは納得がいかない。感情を 押し殺しながら訊ねる。「僕を愛していたのか?」 何も答えない(答えられな い)ウンスに、彼は心からしぼり出すように切なく呟く。

 「愛がなぜ変わるんだ!」

愛は、なぜ変わるのだろう。 いつまでも1人の人を、何故愛することができないのだろう。

春の日は過ぎゆく。夏の夕立もひととき。秋虫の声は永遠に続かない。 凍てつく雪の降る夜も、陽を浴びる朝がやがて訪れる。 恋心は移ろうという意味を、タイトルに込めたのだろうか。

心に落とされた小石の波紋は、時間が経つほどに大きく広がっていく。

(評価:★5)

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