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[コメント] 野性の証明(1978/日)

総合的に考えて、エンターテイメント映画としては充分過ぎるパワーを持った作品。☆4.2点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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この映画の凄い処は、各々の評価ポイントでも映画の中での揺れ幅が激しい事だ。物語では全編を通して「最初から詰んでる(絶望)感」に満ちてはいるが、一方で冒頭からだらしのない展開の仕方で呆れもする。編集では、歯切れの良い展開に躍動感を感じたかと思えば意味不明な繋ぎ方に驚かされる。登場人物達も皆個性的且つ印象的で、その演技に唸らされる名演ばかりだが、その人物がオイオイな行動を取って足元を掬われた気分になる。

レンジャー(特殊部隊)の訓練シーンから始まって、寺田 農が馬鹿っぽく演じる過激派を特殊部隊が掃討殲滅する冒頭の展開は、当時の観客にどう見えただろうか。兎も角、その後にその部隊訓練が引き起こしたらしい惨劇を見せられ絶句させられる。その後も妙に特殊部隊をフィーチャーするシーンがあり、しかし全体としては批判的な物語なので、自衛隊の撮影協力を得る為に「こんなんバーン出しますよ!」とか言って騙くらかしたのかと思ったら(話の中でも新聞社でそんな事やってるので)、自衛隊は協力拒否でアメリカでの撮影だったのですな。まーそうでしょうが。

戦車隊が健さんのアパートの前まで「お迎えでゴンス」(???)

中野良子の魅力が半端ではない。容姿は寧ろ「なんだかなー」なのだが、前半は素人感ギリギリの「真の迫真の演技」を見せ、その後強い意思に不釣り合いな声で惑わせる。ところが双子(ではない?)の姉同様、終盤を大きく残して殺されてしまう。エーッ!? ヒロインぶってまたも健さん(全然ノリ気でない)に縋りつこうとしたバチか。

夏木 勲も格好いい。絶望的状況での唯一の味方で、それが前半は中野に健さんへの疑いの目を向けさせたり、後半は杓子定規な倫理観で健さんと対立したりで一筋縄では行かないのだが、それが佳い。健さんへの斧パスには驚かされたが、切迫状況だし特殊部隊の同族殺しに比べたら全然アリだろう。

熱血部隊長=松方弘樹はヘリでの鬼の形相が佳い。しかしあのシーンは長過ぎた。双方あんなに弾が当たらんものか? 見せたい気持ちで長いシーンになっちゃプロじゃない。と思ったらバナナに滑ったかの様にドッカーン。?

薬師丸ひろ子は本当に素晴らしい。何があっても守ってあげなくてはと思わせるコアラ的な容姿で、健さんと夏木を両天秤に掛けて翻弄する。そこに幼い凛々しさもある。当時はその人気が理解出来なかったが、まさに逸材だ。ところが最後でまさかの事態。おーいっ!

「お姉さんが死んでる!」(ブラ下がってるのは北林谷栄だよ…)

(舘)「俺をどうする気だ?」 (ひろ子)「お父さんに殺されるよ(キッパリ)」 (舘)「ヒーッ!!」

そして健さん。ラストシーンは一般の戦車部隊にまさかの発砲突撃。ひろ子を殺されて愈々狂ってしまったのかも知れないが、普通に演習してたんなら突然の乱入(闖入)に戦車部隊もビビったろうなぁ。でも健さんがやるとどんなシーンでも必然性がある様に見えてしまうのが凄い。本人に嘘がないからだろう。そんな役者は中々いない。

三國連太郎成田三樹夫・ドラ息子=舘 ひろしで大場ゴッドファーザー物語。丹波哲郎松方弘樹三國連太郎で軍民癒着。三國連太郎金子信雄梅宮辰夫で土建ヤクザ。そっちも見たくなる。他にもチョイ出の脇役が強烈な個性を見せており、楽しい。

(評価:★4)

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