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[コメント] スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐(2005/米)

あの駄作だった『ジェダイの復讐』の意味が明確になり、作品としての必然性と輝きを取り戻した。今わかる、あの駄作を名作にしようと努めたルーカスの粘りと執念に最大級を賛辞を贈りたい。
chokobo

10代半ばで見た『エピソード4』のあの感動と、アービン・カーシュナーの手腕が見事に発揮された『帝国の逆襲』を経て、20歳で見た『ジェダイの復讐』にがっかりさせられたことを今つくずく思い出す。着ぐるみのウーピー族、そのおもちゃのような映画に子供だましとも思えるわかりきったエンディング。臭い芝居と言おうか、父親であるダースベイダーがあっさり転向する結末と情けないダースシディアスの負けっぷりなど、壮大なスケールを持つこの原作をあの結末が全て台無しにしたと言っても過言ではあるまい。これは決して大袈裟な話ではない。

今回の三部作でルーカスは、前回のように他人にメガホンを譲ることもなく、あくまでディレクターとしての仕事に執着し、莫大な予算をつぎ込み、遠慮なく撮りきった。これがルーカスであり、『ジェダイの復讐』で失った信頼を正にこの作品を完結させることで勝ち取ったのだ。この映画を終えて、ようやく『スター・ウォーズ』というサーガが完結したのである。

この作品はツジツマ合わせの解説的映画である。誰もが事前に物語りの展開を知っている。そんな限られた状況下でどれほどの作品を仕上げることができるというのか?それを見事にルーカスはやってのけたのである。アナキンがダースベイダーとなりダークサイドに転換するとうことがわかりきった話を、なぜ我々はこれほどに待ち望み、これほどに興奮し、これほどに感動できるのだろうか。

そのひとつは、前述の通り、あの陳腐な結末の『ジェダイの復讐』の話を肉付けし立体感をもたらし、親が子を思う善の意識がそうさせたことをようやく知ることができた感動であろう。そしていまひとつは、やはりあの若かりし頃、映画館で興奮して見たあの『スター・ウォーズ』を映画館の強烈な音量と圧倒的な画面の迫力でもって体感できたことによる感動なのだろう。

スター・ウォーズ』が公開された1977年頃は、日本において映画斜陽の時期だ。映画館で興奮するなどと友達に言っても白い目で見られていた頃のあの時代である。

今、正に映画が再びエンターテインメントとしても商業的にも見直され、莫大な予算をつぎ込み、そして人々に感動を与える商品として復活したことを考えると、大人になった子供(自分達)が十分堪能できる映画がここにあったのである。

映画はやはりリアルタイムで、しかも映画館で体感したいツールである。子供の頃の興奮が再びここに蘇る。そしてその映画が悲劇的な内容であったとしても、その後のことを知っている我々は十分にこの映画を善意で解釈することができるのである。それは言い方を変えれば我々も年をとってそれなりの分別と見る目を持つようになったということになるのだが、この映画はそんな大人達をも納得させる作品に仕上がっているのである。

28年という歳月は途方もなく長い。しかしこの長さがこの映画を感動させる大きな要素でもある。見たくない人は見なくて良い。見たい人が見れば良い。28年という歳月が、あってもなくても独立した映画としての要素を兼ね備えているという点で、優れた作品と言えるだろう。

とにもかくにも理屈抜きで体感できたことに感謝したい。映画の中味がどうのこうのではなく、今ここでこの映画に接することができた感動をお伝えしたいだけである。

なお、この映画と黒澤明からルーカスが脱却することとなった経緯についての推論は、私のブログに一部記載した。そちらをご覧頂きたい。

(評価:★5)

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