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[コメント] 宮本から君へ(2019/日)

冒頭階段のシーン。あー、ここ知ってるってなった。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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堀船福寿荘からこの階段を登って、都電車両が置いてある飛鳥山公園にいたるこの道は50年前私の黒歴史のまっただなかの浪人時代によく歩いた道じゃないか。靖子がレイプされたことを告げる木のテーブルは列車の線路が下にあるあすこだ。そうか靖子のアパートは都電王子駅から行くんだ。

原作は当時週刊誌で読んでいた。30年ほど前だよな。宮本の泣きじゃくる顔のドアップしか覚えていない。この映画の池松はそのイメージのそのもののキャスティングがぴったりハマっている、と思った。でも蒼井優は漫画に出ていた靖子とは違うな。ま、勝手な私のイメージだけれど。TVドラマでやっていたのは知らなかった。あの漫画の印象そのままの暑っ苦しさと熱量をよく映画にしたと思った。まんがの実写版としては成功してる稀有な例だ。

渋谷のユーロスペースで見た。そういえば「この世界の片隅に」もここで見たんだ。終わって東急の脇を通って渋谷駅に向かう道すがらにあるカメラ屋でVHSテープのDVDダビングを受け取った。50年前にフジカシングル8のフィルムであれこれ日常生活を撮影していた。それを30年ほど前にVHSにしてもらった。それを今回さらにDVDにしたんだ。ここに「きみに/こども/うませたい」と書いたはがきを出した女がほんの3秒ほど写っているんだ。

この映画の時間軸が前後しているが、それは非常階段の決闘シーンをクライマックスにもってくる作劇上の要請だけでなく、もはやこの激情を描写するには因果関係などぶち壊して伝えたいシーンだけをぶちまけたほうが合っていると思ったのか。やりすぎるとわけわからなくなってくるが、そのあやうい均衡が上手く成立している。私の記憶ももう年代順には並んでいない。心に刻まれた強さのみが脈絡なく出てくる。そうした意味で確かに「宮本」は私でもある。

(評価:★4)

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