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[コメント] 君たちはどう生きるか(2023/日)

普通に面白かった。
ぱーこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 見る前に、シネマスケープを始め目につくコメントは皆読んだ。ネタバレ読んでも見た感じはそう変わらない映画だと思ったから。元々私は物語ってよくわからない。ストーリーに意味があるってことが不思議だ。だから人のコメントは作品じゃなくてその人が見ていることを言っているんだと思う。作品よりもおもしろいコメントは結構ある。それを読んでいるのが面白かった。

 戦争で母を焼かれた少年が疎開先で経験した思春期の心象風景、という話。頭の自害は思春期のやり場のない自意識のなせる技でしょう。いろいろおもろくないことばかりだけど、一番許せないのはそういうところにいる自分だ。それは自分を罰することでしか贖えない。そうでしなければ自分の立つ瀬がない。それはやはり悪意でしょう、そんなことは知っている。そういう感じ。

 初めの空襲のシーンでマヒト少年が寝巻きからズボンを履き替える時に左足から履く。もう一度同じようにズボンを履くシーンでやはり左足から履く。私は右足から履くので、自分と違うんだと思って見た。疎開先で人力車に乗る。この時マヒトが先に乗り込むのだが、人力車がマヒトの体重でかたむく。夏子が乗り込む時も同様に傾く。少し説明的でやりすぎだと思うけど、こういう細かなところの描写がたまらなくいい。この前、私の幸せな結婚、というアニメを見た。イラスト画を動かした絵物語のようなアニメだが、動きがいちいち変。いま手を前に上げて横に払いました、と言う説明を見せられている感じがする。絵を見て、それを言葉にして初めて見せられたものがわかるという感じ。宮崎駿アニメには当然ながらそういうところがいっさいない。動画だけで十分説得力のある描写だ。

 そうした描写を見てるだけで至福の気分になれるから私にとって意味はあまり重要ではない。妹を後妻に迎えて腹違いの兄弟がいる、という家庭はあった。結婚は恋愛のためではなく、生活のためにするものだから。そういう考えが当たり前なので、おかしなこととは思えない。

 いかにもの洋館の2階の階段上から下を見下ろすと母親が焼かれた炎が燃え上がってくるビジョンが見える。こういうところすごいねえ。この玄関で後妻の夏子が帰ってきた夫といちゃついている。それは足元しか見えない。見せられたマヒトは見つからなように体を低くして自室まで這ってもどる。這いつくばったままドアノブに手をかける。それはやりすぎだろ、そこは下から見えないはずだ、と思う。過剰な演出に思える。初めの頃に青鷺が登場する時、アクセントの伴奏がなる。それも説明過多だろう、と思う。そいうことを考えながら見ているのが楽しい。メインテーマがなかったのは当然でさすがにこの内容では印象的なテーマ曲はつくれない。最後の曲だけですかね。

 いままでの作品で親しんだイメージの総出演でなんどみてもあきない。これは作家にとって過去のものじゃなく今にあるものなんだろう。懐かしんでいる雰囲気がある。君たちはどう生きるか、の本は母親の遺言書だ。書いてあった日付に意味があるはずだが、覚えられなかった。こちらも十分老いている。後半、不思議の国アリスみたいと思っていた。手慣れたイメージの奔流で女性像も相変わらずだ。後半は前半ほどのワクワク感はなかったけど、普通に面白かった。背景景色も相変わらず凄まじく綺麗だった。最後の締めもナウシカと同じくあまりにそっけない終わり方だった。エンドロールには遺作の演出を感じた。関係者への措辞ですね。手書きの名前。

(評価:★4)

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