コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] トランスフォーマー(2007/米)

きっとベイ監督の考える“成長”とは“人前で目立つ”って事なんでしょう。彼自身がそうであるように…
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 …そう言う意味であのラストはきっと“成長”なんだ。たとえそれが露出趣味の人間になるって事でも。

 …というのは置いておいて、正直な話、ここまでの作品が観られるとは思ってなかった。と言うのが正直な感想。オリジナルの思い入れなんぞ全く差し挟む余地のない、怒濤の如き見所の連続と、飽きの来させない絶妙な演出。見事な作品だったと言える。

 これはおそらく監督にマイケル=ベイ、製作にスピルバーグという二人の才能が上手く合わさった事によるものだと思われる。

 ベイ監督は派手な“だけ”の作品を作る監督で、彼の作る作品は確かに見せ場はたくさんあって、本当に派手なドンパチやらカーチェイスやらが出てくるのだが、ベイ監督作品の致命的なところは、見せ場が全部ぶつ切りになってる上に、物理的にはあり得ない事ばかりやってくれるために肝心なシーンで失笑することが多く、しかも物語が極めて単純な上に行き当たりばったりなので、派手なシーン以外思い出が何一つ残らないと言うところにある(多少物語を考えようとした『アイランド』は興行的に失敗したし)。

 対してスピルバーグも娯楽作品を作らせたら派手なものを作ることが多いが、むしろこの人の作品の良さは、緻密な演出にこそある。派手なシーンがあるなら、それをどのように効果的に入れればいいのかを知悉しているため、無駄がない。よって無節操なベイ・エフェクト(と勝手に呼ばせてもらおう)を緩急を付けて効果的に画面に登場させ、飽きさせないようたっぷり観させてくれる。

 この二人の合わせ技は優れてた。仮にベイ監督単独で本作作ったら間違いなく最低レベルの評価しか与えられなかったのを、ここまで点数を上げさせたのはスピルバーグ演出に他ならない。2時間半を全く飽きさせないってのだけでも凄いよ。

 ただ一方、その良さを全て台無しにしてしまうのが物語という奴。ベイ監督の悪さが全て出てしまった脚本は、いくらなんでも無節操な上に無意味すぎる。

 本作には主人公が存在しない。一応サムとウィリアムの二人が人間側では出てくるが、はっきり言えばほとんどなんの意味も持たない。サムがイーベイに出品したお爺さんの眼鏡が引き金になったのは良いんだが、肝心のキューブとメガトロンは既に回収されているので、眼鏡はなんの意味も持たず、放っておけばいつの間にかその場所に着いてる。ウィリアムは娘に会いたい!と願いつつ、そのためになんの努力もしてない。結果として二人の主人公は自分の意志を全く持たず流されるだけ流されて、いつの間にかハッピーエンドになってしまってる。この辺は呆れかえると言うよりはむしろ「流石ベイ!」と唸ってしまうほど。この意味の無さには感動間違いなし。ラストを締めるのが人間ではなくオプティマス・プライムである時点で、物語の方向性を見失ってるよ。

 様々な説明がなされてないが、説明無しで観てるだけで充分という設定の浅さは、逆に評価すべきかも知れないけど。

 メインストーリーが大味な割に小技だけはえらく凝ってるのもベイ監督らしさかな?(特にバンブルビー絡みの小技はいくつもあるけど)隕石落下シーンで「『アルマゲドン』より100倍凄えぜ」には呆れる。どこが100倍?いつまで経っても全然変わりねえよ。こいつは。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (6 人)おーい粗茶[*] ヒエロ[*] Keita[*] JKF[*] ペペロンチーノ[*] 水那岐[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。