[コメント] マッチスティック・メン(2003/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
リドリー=スコット監督と言えば芸術的とも言えるカメラアングルが先ず頭に浮かぶのだが、意外なことに本作はそれを全く感じさせなかった。よっぽどリラックスして撮ったのか、それとも物語の都合を考え、キャラクターで見せることをあくまで選択したのか…
…いずれにせよ、この映画は“人”を撮ることに特化した作品。画面には常に大きな比率で人間が登場しているため、結果的に登場人物の表情とか仕草の方に目がいってしまうし、事実そう言う撮り方をしている。
ニコラス=ケイジは実は私にはちょっと苦手な俳優だが(大抵の作品はキャラが浮いてるとしか思えない)、本作では、プロ意識を持つと非常に格好良いが、反面極度の潔癖性で、気が高ぶるとチック症まで出てくるという、言わば二枚目半の役を演じている。こりゃ又、非常に魅力あるキャラクターで、こういう役こそ、彼には向いてるんじゃないか?上手いはまり具合だ。彼と競演したロックウェルとローマンも上手かった(ローマンは撮影時23歳のはずだが、14歳に見えてしまうのが凄いな…でも肌は露出させなかった方が良かったと思うぞ)。
ストーリーはかなりあっけなく終わってしまうのだが、これってやっぱりハッピー・エンドだと思う。詐欺をしてる時は充実した時間を持っていたロイだが、そのために自分にどんどん強迫観念を増やしていた訳だろ?薄氷を踏むような人生を楽しんでいるように見えて、実はそれが人生の彩りをどんどん失わせていった。
表題のマッチスティックってのは言い得て妙で、光を長く放てば放つほど、マッチ棒ってのは短くなっていく(勿論これは彼がヘビー・スモーカーだって事を伏線にしてるのは間違いないけど)。
最後に全てを失ってしまうことで、逆に彼は人生というものを手に入れる…人は何かを得ようとするなら、何かを失う覚悟をしなければならない。逆に言えば、自分が持っていると思っていたものを失った時に、実は本当に大切なものを手に入れてる。
…と、まとめておこう。
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