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[コメント] モーターサイクル・ダイアリーズ(2004/米=独=英=アルゼンチン)

かわいい子には旅させろ、ってね。「『アカルイミライ』のTシャツの柄の人の映画」って知識以上の知識はコレと言って無い状態で鑑賞。 2004年11月7日劇場鑑賞(おまけ★4)
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ただ与えられた道を進む過程で見つけた志とは、こうやって掴んだ志の足元にも及ばない物なのかもしれない。勿論、ソレを突き進む行為とは川の流れに逆らって死を覚悟で進む程危険かもしれないが

見終わっての評価は★3だったが、その後色々考える事が中々楽しかったので★4を献上。勿論これは映画その物に対する評価とは言い難いかもしれないが。

エルネスト・ゲバラ。当時23歳。ねこすけ。現在17歳。

この映画に対して「青春」と言う言葉を用いて”若さ”を強調する批評を良く見かけるのだけど、実を言うと、勿論「感じなかった」と言うと嘘になるのだが、それ程強調されるほど感じなかった。単純に”若さ”と言うキーワードを当てはめるのなら同じガエル・ガルシア・ベルナルで言うと『アモーレス・ペロス』や『天国の口、終わりの楽園』の方が強烈だった、言うのが本音。まぁ両者共に、本作で言う”若さ”とは随分と違う物なのだろうが。

実を言うと、俺はこの映画が誉められる理由が良く分からない。珍道中を経て自分の志す道を見つける、と言う、ちょっと違うが、所謂「アイデンティティの確立」的な物(=ロードムービーの終着地である、「旅で感じる何か」を感じる瞬間、と言う方が適切か)をきちんと描けている点から見れば、この作品が誉められる理由も良く分かるのだけど、なんだろう。非常に退屈だったのだけど。

バイクが壊れる(捨てる)まで1時間。壊れてから1時間、ぐらいの時間配分だったと思うのだけど、俺、思わず時計を見た時まだ1時間しか経ってなくて完全に集中力切れちゃったもん。で、後は睡魔との闘いと言うアホな所に落ち着く俺が居るわけで・・・

勿論これは俺に原因もあると思うけど、結局の所、この映画に俺を引きつける”何か”が無かった、と言う所だろうか(無かった、とは一概には言えない。実際、見終わった後思い返してみれば「もう一度見た方がいいかも」と思えてくるのだから。そして★4をつけているのだから)。

ガエル・ガルシア・ベルナルの魅力はさすが。単なる二枚目俳優ではない、と言うのが凄く分かる。

しょーもない珍道中が、次第にエルネスト・ゲバラ(とアルベルト)の情熱に火をつけていく様子も、きちんと描かれており、映画として決して悪い作品ではない事は確かだろう。ロードムービーらしく、各地の映像も綺麗に撮られていたし。

ただ、どこか作品演出全体が一本調子に感じられ、ダラダラと画面が動いていると言う印象が拭えない気がする。特に前半1時間など。どうも、俺はこう言うテンポにしてやられてしまい、その結果後半1時間に眠気との闘いという、しょーも無い結末に落ち付いてしまったのかもしれない。

所詮一介の高校3年生に過ぎない俺がゴチャゴチャ言うのは生ガキのいう事かもしれないが、見終わってふと思ったので書いておく。

よく「敷かれたレールの上を走る」と言う表現が使われる。俺達は、その敷かれたレールの上を走っているだけの人が大多数なのかもしれない、と言う前提の下に以下の文章を書く。

まぁ所詮負け犬の遠吠えでしかないのかもしれないが。

GO』の親父(山崎努)は「広い世界を見ろ」と言ったが、俺達ガキどもが修学旅行で見てる世界なんて、狭苦しい世界でしかないのかもしれない。例え修学旅行でハワイに行こうと、それは定められた枠組みの中で見てきた外の世界であり、自分で見に行った外の世界ではない。別に、そこで受けたショックや、ソレから生まれた志などを否定する気は毛頭無いのだが、所詮それは与えられた道の中から外の世界を見聞した以上の意味を持たないのではないだろうか。

俺達には旅に出る機会はいくらでもある。しかし、旅に出る心は未来から受ける脅迫によって潰され、そして敷かれたレールの上に甘んじる(勿論、敷かれたレールと言っても、ある程度は自分で切り開く必要のあるものだが)。そして、そのレールの上を走りながらアイデンティティを確立し、自分なりの志や「やりたい事」を見つけて行く。別にソレが悪いとは思わないし、所詮これは俺の価値観でしかないのだが、俺はそこに絶対的な価値を見出せない。

例えば、エルネスト・ゲバラは、あそこで南米の旅に出なければ、それなりに裕福な恵まれた中産階級の家でぬくぬくと育って、医者(当時の政権下では軍医だけど)として、裕福な生活を送り、70歳とか80歳まで生きて友人に囲まれて「大往生だったな」と拍手で天国に贈られたかもしれない。

しかし、彼が南米を旅して得た答えとは、ソレとは全く逆の物で、ハンセン氏病の治療所の患者と医者を隔てる川を渡るシーンで描かれている通りなのだ。

川の流れに反してでも自分のやるべき事の為に、誰も泳ぎきった事の無い川を泳ぎきって手を伸ばす事なのだ。それは、喘息もちの彼には命がけの行為であるかもしれないが、彼はそれでも人々の為に手を伸ばす。その傍らで私欲を肥やすだけの医者や資本家を憎み、世界平等を夢見る。

実際の彼は、友人に拍手で贈られなんていう暖かい最期とは程遠く、志半ばにして捕らえられ、小学校の教室で銃殺された。

その時彼は「撃て、臆病者め!」と叫んだそうだ。

映画で描かれている、旅に出る前のゲバラからは想像も出来ない。

昨今、高校の修学旅行の目的として大学見学を行う学校が多々あるそうだ。我が校はハワイの修学旅行。いずれの修学旅行にしても(まぁ学校プログラムの一つだから所詮「思い出」程度の行事かもしれないけど)「敷かれたレールの上」に違いは無いと思うのだが、せっかく外の世界を見れるチャンスにそんな物を見てどうするのだろうか?

大学に行く事だけが人生なのだろうか。って、こんな事ココに書くべき事じゃないか・・・

でも、ゲバラは医学生としての知識は別として、彼の思想は、大学や、親に用意された道でなく、自分から進んで選んだ道の過程で得た物だ。

多くの人が青春映画を見て懐かしむのは、その年代がもう戻ってこない物と言う認識があっての事だとするのら、その年代を”現在”として生きているガキに旅させてみる、と言うのも大切な教育であり、大人が子供に与えるべき「機会」なのかもしれない。

無論、そこで何かを掴めるかどうかは本人の問題であるが

旅したいなぁ・・・

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (5 人)sawa:38[*] トシ makoto7774[*] レディ・スターダスト[*] 水那岐[*]

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