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[コメント] キングコング対ゴジラ(1962/日)

これを見た時、怪獣ファンとしての反抗期の終わりを感じた。(かなり私的なコメントとレビュー)
空イグアナ

僕はずっと怪獣映画が子供の映画と言われていることにコンプレックスを抱いていた。それはつまり、怪獣映画を見ている自分は、決して子供ではない、という感情だ。第一作目の『ゴジラ』の素晴らしいこと。僕が見たいのは、ああいう怪獣映画なのだ。子供向けの物語が見たくて怪獣映画を見ているわけではないのだ。

だから、怪獣映画にはシリアスなドラマを求めていた。さらには怪獣ファンを名乗りながら、昭和ゴジラや昭和ガメラをほとんど見ていない。子供向けに作られたゴジラ、ガメラなんて見たくなかったのだ。

この『キングコング対ゴジラ』映画はコミカルに作られている。だから大学生になるまでこの映画を見なかった。かつての僕はコミカルなゴジラなんて受け入れられなかったのだ。人間はコミカルに描いても、怪獣は野生動物として描いてほしかった。

でも、大学生になって「そういうのも、いいんじゃないか。」と思う気持ちが出てきた。きっかけはいくつかあるが、一つはハードSFを実際に見たことだった。僕が好きな怪獣映画は『ガメラ2』だ。映像の迫力もさることながら、怪獣の生態系が丁寧に描かれており、「これは子供の映画じゃない!」と気に入っていた。でもハードSFの立場から言えば、ビルみたいな巨大な怪獣が暴れ回る時点でキワモノなのだ。「こんな雰囲気の怪獣映画ができないかなあ。」と思いながら見ていた、ハリウッドの大人向けSFにしても、ハードSFの科学的考察の前には、子供の漫画同然なのだ。

結局、僕は子供なのだ。怪獣が暴れ回ったり、あるいは俳優が銃をバンバン撃ちまくるアクションとか、子供の頃からあこがれていた「かっこいいもの」に今でもあこがれているのだ。社会派ドラマやハードSFのような難しいことを考えずに、かっこいいものを楽しみたいのだ。(いや、難しいこと映画もまた好きですよ)

というわけで、この『キングコング対ゴジラ』をレンタルしたところ、予想以上に好きになってしまった。

以前の僕とは違ってきた。最近、昭和ガメラをテレビでよく見るようになった。見るだけでなく、ビデオに録画して保存するようになった。かつての僕なら、見たとしても、もっと馬鹿馬鹿しいと思っていただろう。また、僕は平成ゴジラが大人の映画として不十分な仕上がりにずっと不満だった。それが最近では、「どうせなら思いっ切りお子さま向けにしてしまえばいいのに。」と以前の僕なら絶対考えなかったようなことを考えている。

もう以前のようなコンプレックスを抱かなくなった。自分がこれからどのように怪獣映画と接していくか、わかった気がする。僕はこれからも、怪獣映画を見続ける。でも僕は子供ではない。そこに映っているのが現実でないことを知っている。科学的、社会的に考えて、どこが間違っているかもわかる。ドラマも陳腐なものでは満足しない。もし映画が子供向けだったとしてもかまわない。怪獣映画を見る目的は、子供の頃からあこがれていたものを楽しむことだからだ。むしろ、子供向けなら難しいことを考えずに見ることができる。(これは僕や怪獣ファンに限らず、大人が子供向け映画を見ること全般に言えるかもしれない)

成長した子供は、子供扱いされることを嫌って、反抗期に入る。反抗期を脱したとき、自我が確立する。それを体験したような気分だ。

(『キングコング対ゴジラ』の批評と言うより、大人が何故子供っぽい映画を見るかの話になってしまいました。最後まで読んでくれた方、ありがとうございます)

2001.12.10

(評価:★4)

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