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[コメント] 花とアリス(2004/日)

80年代美少女アイドル達に憧れと欲望を抱きつつ青春時代を過ごしてしまったロリコン世代の「40歳のリアル」的な嗜好を完璧に表現しつつ、それを青春映画の秀作へと仕立て上げてしまった岩井俊二の手腕には白旗を揚げるしかないだろう。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







育ちというものは怖いもので、「MOMOCO」なんかを読みながら80年代美少女アイドル達に憧れと欲望を抱きつつ青春時代を過ごしてしまった我々の世代には、長年の時を経てその度合いは違えども、心の奥底にはいまだにロリコン趣味的なものがあることをまずもって告白しなければならないだろう。

思えば今、あの懐かしの80年代メロディが巷によみがえってきているのと同様に、ここ数年また10代美少女アイドル達が脚光を浴びるような時代になってきた。それもここにきて我々の世代がメディア自体を動かすようになってきたからだと思われるが、そのような中で同世代の岩井俊二がこの作品を撮ったことは、彼の履歴を顧みるまでもなく当然のことであるように思えた。

そのくらいこの映画はロリコン趣味に溢れた映画である。その度合いは、もはやヘタレ・ロリコンとも言うべき私のような者には「さすがに今はちょっとキツイな」と思ってしまう所もあるほどである。しかしそれでもこの映画に肩入れしてしまうのは、自らがロリコンであることを包み隠さずもせず、むしろその「40歳のリアル」的な嗜好を完璧に表現してしまった岩井俊二の潔さに対する賞賛の思いと、同時にそういった部分を除いてもこの作品が映画として大変な魅力に溢れたものであるという思いからだ。

例えばバレエの写真を撮るシーンひとつ取っても好きな人にはまさにお宝満載で、最初は「おいおい、マジかよ」とか思ったりしたものだが、それがやがてあの「2人の写真」へと帰結していき、あの涙の告白へと発展していく様を見せられると(しかも、その告白後の少年のひと言よ!)、これはもう完全に岩井俊二の勝ちなわけで、私は悔しいながらも彼に白旗を揚げるしかなかった。

主役の2人(鈴木杏蒼井優)の素晴らしさは言わずもがなで、爽やかなラストも心地よかった。いろいろ言ったが、やはりこれは青春映画の秀作だ。

(評価:★4)

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