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[コメント] 花とアリス(2004/日)

いままでかすかにのぞかせていた本性を突然あからさまにした岩井俊二にはじめてエリック・ロメールと同じ匂いを感じた。
kaki

エリック・ロメールのパリは写実的で、街の喧噪もそのままだしフイルムの端を行き交う人々はカメラに振り返りさえする。それに対し岩井俊二の日本はあくまで抽象的だ。両者の映画とも光が強く印象に残るが岩井俊二のそれはロメールのそれとは違い、ありふれた情景のはずなのに緻密な計算と技術を駆使し、まるで記憶の中の世界のように非現実的な印象を受ける。アプローチは全く異なるが今回『花とアリス』を観て両者の本質的な部分、監督(人間)としての基質の近さをすごく感じた。それはかなりの比重で映画が会話に支配され、その話される会話の内容はもちろんのこと、おそらく声で役者を選んでるとさえ思われるくらい言葉の語り方、話しての声の質にまで重点がおかれていること、そしてなにより一見おしゃれですかしてるのに実はかなりエロいこと。ちょっと岩井俊二は少女趣味なのが気になりはするが個人的な嗜好を表面化させてきたことは賛否両論あるだろうし、これまでの大半を占める女性ファンをおおいに減少させる危険性はあるにせよ、この映画をただのきれいな映画ではなく、ロメールの映画で常に感じる昂揚感を感させてくれた。おそらく岩井俊二という映画監督のターニングポイントになるであろうこの作品を個人的には熱烈に歓迎する。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (8 人)ジェリー[*] chokobo[*] moot Santa Monica ちわわ[*] 緑雨[*] AKINDO sawa:38[*]

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