勿論、その役者たちの演技を引き出したのは監督の実力なのだろうが、カメラワークなどの映画的な部分で見るべきところはほとんどなかった。暴力シーンが途絶えると緊張感も途絶えてしまうのはいかんともしがたい。そういったショッキングな描写ばかりが突出しすぎているせいで、暴力によって虐げられてきた人々の痛みや、暴力に頼らなければ自己主張できない男の悲哀といった要素がもう一つ伝わってこなかった。

そんな中で、田畑智子の哀れさはとても印象に残っている。父親である俊平（ビートたけし）の暴力から逃れるために結婚して家を出るが、そこでもまた夫（寺島進）からの暴力に耐えなければならなくなる。どこにも逃げ場のない絶望。

彼女や鈴木京香、中村優子など俊平と関わる女たちがことごとく不幸な末路を辿る中、濱田マリだけは最後に逞しさを見せつける。女にも弱い女と強い女がいるということだろう。しかし、社会や家庭における弱者と強者との差・違いというのは一体何なんだろうかと考えると、とてもやりきれない気分になってしまう。そんな胸糞悪さはひしひしと感じられる映画であった。